1年前に秋田県内を襲った記録的大雨。秋田市では600人を超える消防団員が救助や避難誘導などにあたったが、消防隊との連携で課題が浮かび上がった。秋田市消防本部は、情報を一元的に発信できるよう体制を見直した。
2023年7月の記録的大雨では、秋田市の中心市街地で大規模な浸水被害が発生した。
「腰まで入水して動けない」
「高齢の夫婦ですが、床下浸水して避難できません。妻は車椅子です」
「車が水没し人が中にいるようだ」
これらは、秋田市消防本部が公開した2023年7月15日からの大雨による119番通報の一部だ。
15日の通報は、2023年の1日平均の10倍を超える633件に上った。17日までの3日間で、消防隊の出動は158件。現場で消防隊と連携して活動したのが消防団だ。
消防団は非常勤の地方公務員として、火災はもちろん、地震や水害など大規模な災害が起きた際に救助や避難誘導にあたる。
「あの日は午前10時ごろに団員の招集がかかった」と話すのは、秋田市消防団員として10年以上活動する柏谷宙斗さん。冠水した道を通行止めにしたり、う回路を設けたりしながら向かったのは、東地区コミュニティセンターの周辺だった。
当時、城東分団に所属していた柏谷さんは「現地に着いた時、浸水はすでに腰より上。深い所だと人の背丈ぐらいまで浸水している所があった」と振り返る。
ライフジャケットを着用し、消防隊と連携して住民の避難誘導を進めたという柏谷さんは「消防隊のボート救助の後方支援をした。スムーズに活動できた」と話す。
当時、城東消防署で消防隊の指揮をとった保坂一茂さんは、次のように振り返る。
秋田市消防本部・保坂一茂さん:
「(消防隊と消防団について)現場の最前線で市民の方々に手を差し伸べる機関としては両輪だと思っている。消防隊が水没してしまった家屋から市民をボートに乗せて救出する、消防団がそこから避難所に搬送する。まさにそういった連携があったが、本当に“一握り”だった」
2023年7月当時の体制では、消防本部と消防団長それぞれが、消防署、消防団の幹部に指示や情報を伝えていた。消防隊と消防団の横の連携が取れず、互いの動きが見えづらいのが課題だった。
消防団経験38年で、現在、消防団の幹部を務める鈴木重浩さんは「指揮系統が機能しなかったところがある」と指摘した。
秋田市消防団幹部・鈴木重浩さん:
「広域の災害時には、マンパワーを必要とする分団へ、他の分団から応援を指示するなどの効果的な運用が必要だった」
そこで秋田市消防本部は6月、新たな消防団の水害時初動マニュアルを作成した。
これまで配置場所が定まっていなかった消防団の幹部を、消防署や分署に配置することに改めた。消防署の幹部と消防団の幹部が署内で直接顔を合わせて、それぞれが持つ情報を一元化する体制を目指す。
秋田市消防団幹部・鈴木重浩さん:
「要救助者がいた場合、消防団員が安全なところまで救助・避難させ、それを消防署の救急車などにつなぐといった情報が、幹部が同じ場所にいるので、すぐにできると思っている」
秋田市消防本部では新たな体制の下で、机上の訓練を始めている。
秋田市消防本部警防課・大塚豪さん:
「今後、大規模な水害があった際には、消防署と消防団が一体的に活動することで、限られた人員・資機材を効率的に活用して、皆さんの安心安全を図っていきたい」
秋田市消防本部の署員が約350人であるのに対し、消防団員は1500人以上で、単純に考えて4倍以上のマンパワーがある。
一方で、高齢化や希望者の減少で、消防団員は10年前の2014年と比べて400人近く減っている。
秋田市消防本部は、「一人でも多くの市民に消防団の活動に参加してほしい」と話している。
※収録の都合で、ニュース動画が一部欠けています。
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