自民党総裁選挙まで約2カ月。党内6つある派閥のうち5つが解散した後、初めて行われる総裁選ということもあり、誰が立候補し、どんな票の動きをするのか、これまでにはない予想が飛び交う状況だ。有力候補の一人と言われているのが茂木敏充幹事長。出馬の意向は示していないが、経済担当大臣時代にはトランプ前大統領から「茂木はタフだ」と言われたことから「タフネゴシエーター」の異名を持ち、茂木幹事長の発言により円相場も大きく振れるほどの影響力もある。今回、初の出馬はあるのか。また熱を入れているスタートアップ支援とは――。7月24日、『ABEMA Prime』に初出演し、現在の心境などを語った。
【映像】トランプ前大統領と会談する茂木幹事長
■トランプ前大統領も認めたタフネゴシエーター「外交は力強さと包容力」
2021年に幹事長となった茂木幹事長だが、これまでも経済担当大臣、外務大臣などを歴任。特に前回のトランプ政権時代には、日米貿易協定をまとめあげ、このほかにもTPP交渉、日米通商交渉などがあったが、この際にトランプ前大統領から「茂木はタフだ」と言われ、ここから「タフネゴシエーター」の異名がついた。今月20日も、第2次トランプ政権、いわゆる「トランプ2.0」が実現した場合についても「トランプさんになったら日本は大丈夫なのか、こんなことを聞かれますが、うまくマネージ(管理)できると思います」と発言したことも注目された。
この外交力について茂木幹事長は「外交には2つの側面がある。1つは相手のことを考える包容力だ。それとこの基本的な価値、国際法を尊重する、問題は武力によってではなくて、平和的に解決するという力強さ。包容力と力強さ、両方を持っていなくてはいけない。特に最近、新しい国々が台頭している。いろいろな考え方の国がある中で、我々が考える価値観に近づけていくという意味では、この力強さ、そして包容力をうまくバランスを取りながらやっていく必要がある」とした。
外交の中でも2国間交渉が得意と言われ、再びトランプ政権になった場合でも問題ないという発言を繰り返す。「トランプさんがマルチというか多国間の枠組みよりも、2国間でのリール、バイの交渉を好むのは間違いない。ここで大切なのはどっちが勝ったというゼロサムにしないこと。お互いにとってメリットがあるウィン・ウィンの合意を目指していく。そのためにもトランプさんが何に関心を持っているのか、当時で言えば牛肉の関税、これが一番関心が高かったが、そういったことを見極めながら、一方で日本としても譲れない一線があり、そこの中でお互いにメリットがあるような合意をしていくということ」と述べた。
現在、大統領選の行方はバイデン大統領の撤退を受けて、民主党からハリス副大統領が後継候補に。銃撃事件以来、トランプ前大統領に流れが傾きかけていた中、支持率ではむしろハリス副大統領がわずかにリードするような展開にもなり、混迷を極めている。トランプ前大統領とハリス副大統領、どちらが大統領になる方が日本になって得かという問いに対しては「いずれにしても日米関係、日本外交の基軸。誰が大統領になってもしっかりした関係を作っていかなくてはいけない」と言うに留まった。
■派閥解散後、初の自民党総裁選「3年前も結果的には自主投票だった」
11月に行われるアメリカ大統領選を前に行われるのが自民党総裁選。実質的に、日本の総理大臣を決めるものだ。自民党では6つあった派閥のうち5つが解散。茂木幹事長も、4月17日に53人いた「茂木派」を自ら解散。これまで派閥ごとに読めていた票の行き先が見えない状況だ。自身の出馬については態度を保留している茂木氏だが「前回、3年前の総選挙も、当時7つの派閥があったが、6つの派閥は結果的に自主投票。枠組みで総裁選はもう戦えない時代になってきた」と語った。また、現在の元派閥が今も機能しているかという点においては「みんな仲はいい。ただ自分が一番と思っている政治家の集団だから」と、動きについて明確な答えは示さなかった。
総裁選を控えたこの時期にメディア露出が増えたという指摘もある。「たまたまある番組に出たら反響が良かったようで、いろいろお誘いを受けるので、なんとなく自然体で出ているという感じだ」と答えたが、これまでは露出を控えていた動きもあったと明かした。「例えば日米貿易交渉にしてもそうだが、なかなか途中の段階で言えないことが多い。結果を出すことに集中していたので、その分露出は抑えていた」と振り返った。また発言に対して慎重な姿勢が目立つという声にも「この12年間ずっと大臣や自民党の四役をやってきて、どちらかというと発言が慎重になることはあった。これから少し考えなくてはいけない。日本は非常に厳しい状況だから、言うべき時に言うべきことを躊躇なく言っていきたい」と答えた。
■茂木幹事長が熱量を上げて語るスタートアップ支援「地方で戦略分野を」
今、茂木幹事長が声を大きくしているのがスタートアップ支援だ。「例えばアメリカと日本を、この20年で比べて見てもトップ10に入る企業はアマゾン、アップル、テスラなど20年前にはまだスタートアップが始まっていなかった企業で、新興企業6社がトップ10に入っている。ところが日本は顔触れがほとんど変わっていない。アメリカは10年間で生産性が10%以上も伸びているのに、日本はほとんど横ばい。何が違うかといえば、アメリカは成長産業に資金と人が移動したから」。案としてはNISAにおける新商品の活用をあげ、「2200兆円ある個人資産の半分以上がタンス預金や銀行預金。スタートアップに流れるようにしたい」と構想を説明した。
ここでは、ひろゆきから「金を突っ込めばいいというのはわかるが、本当にやらなきゃいけないのはITの会社がきちんと儲かることでは」と現状の整備について声が飛んだ。「たとえばAirbnbで物件を貸すというのも、旅行業法で違法。日本の会社側ではできないから、アメリカの会社に全部お金を取られている。Uberに関しても、日本だとタクシー業界から献金をもらっているから、白タクはできない。2種免許を必要にするとか、タクシー業界しかライドシェアができないなど、既存の業界を守る法律を作るのが先になっている。IT業界で素人がやって儲かればいいとなれば多少問題は出るだろうが、すぐに政治がIT業界に網をかけて、ビジネス規制を自民党がやっているのがそもそもの問題じゃないか」と指摘した。
これには茂木氏も「おっしゃる通り」と同調。「ライドシェアは全面解禁すべきだと考えている。霞が関の前例主義ではなかなか進まない。日本人は圧倒的に高いオペレーション能力を持っているから、海外で導入されて広く利用されているライドシェアが日本でできないと考える方がおかしい。例えばキックボードでもアメリカでは事前規制していない。利用が多くなってきて問題が起こりそうになったら、その段階で初めて規制が入る。最初から全部止めてしまうのはいいことじゃない」とした。
茂木氏の考えるスタートアップ支援は、東京一極集中からの脱却と地方活性化がセットになっている。「地方にもすごくチャンスが出てきた。AIであったり量子コンピューター、さらには次世代のモビリティー、ディープテック、これを動かすために半導体や、データセンターが必要。さらにエネルギーの供給もいるが電源があるのも地方だ。バブルの時代から35年ぐらい、東京一極集中が続いてきたがもう一回、日本列島改造して地方に戦略分野が立地をして、そこで事業が生まれ、雇用が生まれるチャンスが生まれている」と語った。
(『ABEMA Prime』より)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。