脳死の可能性がある患者に対して、実際に「脳死とされうる状態」との診断がなされたケースは年間30%にとどまるとの推計が26日、厚生労働省研究班の調査で明らかになった。医師が患者を「脳死とされうる状態」と診断せず、家族に臓器提供の選択肢を提示しなければ、提供の意思があったとしても尊重できなくなる。
厚労省研究班(代表、横堀将司・日本医大教授)は、意識がなく瞳孔が開いているなど脳死の可能性がある状態を経て死亡した患者の人数について、全国の医療機関に調査した。脳死下での臓器提供が可能な895施設に尋ね、647施設から回答を得た。
調査結果によると、2022年度に「脳死とされうる状態」を経て死亡した患者は612施設で3017人いた。だが実際に脳死の診断を受けたのは932人(30・9%)。家族に臓器提供の選択肢が提示されたのは761人(25・2%)だった。家族の承諾があり、実際に提供に至ったのは105人だった。
医師が臓器提供の選択肢を患者家族に示す例が少ない背景として一般的には、病院の受け入れ態勢に余裕がないこと▽医療者の肉体的、心理的な負担が大きいこと▽過重な負担に対する収益性が見合っていないこと――などが挙げられる。【倉岡一樹】
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