収穫したばかりのカリモリを手にする小嶋昌男さん=愛知県知多市で

 地面を覆い隠すように伸びた葉やつるに、強い日差しが降り注ぐ。7月半ばに訪れた愛知県知多市八幡地区の農地には、主に漬物として食べられるカリモリの畑が広がっていた。上から見ると葉っぱばかりに見えるが、棒で葉をかき分けると、ズングリとした円筒形のウリが次々に姿を現した。  地元の人以外には耳慣れないが、JAあいち知多の西部かりもり部会で部会長を務める小嶋昌男さん(81)は「子どもの頃から当たり前のように食べていた」。同県が認定する「あいちの伝統野菜」に選ばれている在来作物で、5月半ばごろから8月にかけて収穫され、尾張地方ではスーパーマーケットの野菜売り場に並ぶ。  別名「堅瓜(かたうり)」とも呼ばれるように、しっかりとした食感が特徴。漬けても歯応えが良く、あいちの伝統野菜のホームページでは「カリッと食感が良く、ご飯がもりもり食べられる」ため、その名がついたと紹介される。  少なくとも明治時代には現在の名古屋市などで栽培されていた。昭和に入ってから尾張の北部や西部に産地が拡大。漬物業者が奈良漬などに加工していたとされる。醸造業が古くから栄えてきた知多地域では、酒かすを使うかす漬けが根付いたとも言われる。  20年ほど前から生産する小嶋さんによると、カリモリは育てやすいという。春にレタスを収穫した畑に植えて「45日から50日くらいで収穫できる」。同JAでは5月からわせ種の「早生カリモリ」を、6月ごろからはカリモリを出荷する。  県内の伝統野菜の普及などに取り組むあいち在来種保存会代表世話人の高木幹夫さん(74)は「限られた地区にしかない野菜。自分で食べる分だけ育てる人も多く、ウナギとともに奈良漬として食べられるなど、地域の食文化になっている」と話す。愛されてきた歯切れのいい食感は、さらに次の世代へと受け継がれていく。 文・写真 海老名徳馬

◆味わう

 JAあいち知多・西部かりもり部会の女性によると、カリモリの漬け方は「好みでいい。塩だけの人もいれば、しょうゆやだししょうゆでも」とのこと。訪れた畑では濃厚な味わいのかす漬けと、さっぱりとしたビール漬けをいただいた。  記者も自宅で浅漬けにしてみた。半分に切って中の種を除いたカリモリを5ミリほどに切り、しょうゆと酢、酒に砂糖を少しと唐辛子をひとつまみ加えた汁に漬け、1時間ほど=写真。キュウリのようなさわやかさに、メロンのような味わいも。ご飯にもお酒にも合う仕上がりとなった。


鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。