性的少数者(LGBTQ)の情報発信や相談支援を行う「プライドハウス東京レガシー」が、東京都内にオープンして間もなく4年。国内では初となる常設の総合LGBTQセンターで、利用者は1万4千人を超えた。困難を抱えやすい性的少数者の若者らの交流会を開くほか、自治体や教育関係者の視察を受け入れるなど、重要な活動拠点となっている。 (河野紀子)

性の多様性を表す「レインボーフラッグ」が飾られ、LGBTQに関する書籍コーナーや作業スペースもある=東京都新宿区のプライドハウス東京レガシーで(同団体提供)

 新宿区の東京メトロ「新宿御苑前駅」近くにあるビルの2階。約140平方メートルのフロアには、個別相談に応じるミーティングルームや、性的少数者に関する約3500冊の本や雑誌などが並ぶコーナー、多目的スペースもある。2カ所のトイレは、性別に関係なく利用できる「オールジェンダートイレ」だ。Wi-Fi完備で、コンセント付きの机を配置。一人でゆっくり読書したり、複数人で調べ物をしたりもできる。  利用は無料。性的少数者だけでなく、家族や友人ら誰でも利用できる。「当事者がふらっと立ち寄って、話ができる場所はとても重要」と、施設を運営するNPO法人プライドハウス東京(同区)の共同代表、小野アンリさん(39)。関心のある人にとっても、気軽に訪れて知識を得ることができるという。  プライドハウスは、2010年にカナダのバンクーバーで開かれた冬季五輪の際にスポーツ界で性的少数者への理解を広めるため、現地のNPOが設置したことがきっかけ。その後、大型の国際スポーツ大会の開催に合わせ、各地の団体が立ち上げた。日本でも当初は20年に予定されていた東京五輪に合わせて準備が進み、国際カミングアウトデーの10月11日にオープンした。  レズビアン、ゲイ、生まれた性別と性自認が異なるトランスジェンダー、自身の性自認や性的指向が決まっていないクエスチョニングらの性的少数者は人口の3~10%とされる。周囲の無理解や偏見にさらされ、特に若者は自殺リスクが高いことが課題だ。  東京レガシーの運営団体などが20年、12~34歳の性的少数者に行ったアンケートでは、回答した1654人のうち、7割が同居者との生活で困難を抱えていた。また3人に1人は、コロナ禍で安心してセクシュアリティーを話せる相手や場所とつながりにくくなったとした。  東京レガシーでは、若者向けに専用の相談窓口を設置。「専門知識のある相談員が対応する。守秘義務があり、話した内容は一切外部に出ない」と小野さん。対面とオンラインで受け付けており、ホームページから予約する。  小野さん自身、性自認が女性でも男性でもないノンバイナリーで、性のあり方に悩んだ一人だ。高校3年のときに初めて打ち明けた友人が、丸ごと受け止めて大切にしてくれた経験が、人生を変えた。10年ほど前に米国国務省の研修生として全米5カ所を視察すると、小規模な都市にも性的少数者の若者に特化した支援施設があり、日本との違いを感じたという。  昨年4月に運営団体の共同代表に就任。さらなる設備とサービスの拡充に向け、月額500円から寄付できる「ともにクラブ」を始めた。スポーツ界で支援者を増やすため、研修会や試合会場での展示など新たな試みも。小野さんは「LGBTQの人たちの居場所として持続可能な施設にし、理解を広げていきたい」と語る。


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