事故機と同型の米軍輸送機CV22オスプレイ=米軍横田基地で2018年10月3日、小林努撮影

 米空軍は1日、鹿児島県・屋久島沖で2023年11月に空軍輸送機CV22オスプレイが墜落して搭乗員8人が死亡した事故の調査報告書を公表した。報告書は、変速装置(ギアボックス)内のギアの破損による左翼の故障と、操縦士が警告灯を無視して早期に緊急着陸しなかった「人為的な判断ミス」が重なったのが原因だと結論づけたが、ギアが破損した原因は不明のまま。米軍や自衛隊は飛行を一時停止した後、3月以降、安全対策を講じたとして飛行を順次再開しているが、住民からは不安の声が漏れる。

 沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場には米海兵隊のMV22オスプレイ24機が配備され、周辺の住宅地上空を日夜飛ぶ。「原因が解決しないまま飛んでいるのは恐怖でしかない」。米軍機の騒音被害に対する損害賠償請求訴訟で原告団長を務める同市の山城賢栄さん(85)は不安を口にした。

 報告書では事故機の警告灯が墜落前に何度も点灯していたことが明らかになった。山城さんは「宜野湾は住宅が密集し、急に着陸できる場所はほとんどない。沖縄国際大に米軍ヘリが墜落した事故(04年)のようになる。普天間飛行場は一日も早く閉鎖、撤去してほしい」と語った。

 玉城デニー知事は「米連邦議会でも根本的対策が講じられるまで飛行停止すべきだとの意見があり、このような状況の中、飛行が継続されることは県民に不安を与える」とコメントを発表した。

米空軍オスプレイの航跡概略図

 墜落事故が起きた鹿児島県では、防衛省九州防衛局の幹部が県庁を訪れ、事故原因などを桑代毅彦・県危機管理防災局長に説明した。桑代局長は「県民に不安の声がある。徹底した安全対策と丁寧な情報提供をお願いしたい」と要望した。

 屋久島町議の真辺(まなべ)真紀さん(51)は「故障原因が分からないまま飛行を続けるのはリスクが大きすぎる。納得できない」と語った。事故機が墜落したのは島の約1キロ沖。オスプレイは日ごろから上空を飛んでおり、「住民は危険を感じている。機体が万全になるまで飛行すべきではない」と語気を強めた。

 陸上自衛隊のオスプレイが暫定配備されている陸自木更津駐屯地がある千葉県木更津市の市民団体「オスプレイ来るな いらない住民の会」の野中晃前事務局長は、事故機の操縦士が警告灯を無視して飛行を継続したことを原因の一つとした報告書の内容に「人為的な判断ミスを強調しており、印象操作になりかねない感じがする」と批判。「オスプレイの安全性の一つとして説明されてきた、(エンジン停止時に空気抵抗を使ってローターを回しながら着陸させる)オートローテーション機能が作動したのかどうか触れられていないことは不可解だ」と指摘し、改めて同駐屯地からの撤去を求めた。

 一方、同市の渡辺芳邦市長は、防衛省サイドから、今回の事故の状況や原因などの詳細について説明があったことを明かした上で「事故原因を踏まえて各種の安全対策を講じ、安全な飛行実績を重ねていることを確認した。引き続き、オスプレイをはじめ、木更津駐屯地のあらゆる航空機について安全対策の徹底を求め、市民に不安が生じることのないよう取り組んでいく」とコメントした。

 「事故原因に対応した各種の安全対策を講じることで同様の事故を予防することが可能だ」「極めてまれなギアの破損だと承知している」。木原稔防衛相は2日の閣議後記者会見で、安全対策などに問題がないのかどうかを問われ、こう述べた。墜落事故を受け「日米間では前例のないレベルで技術情報に関するやり取りがなされている」と付言することも忘れなかった。

 オスプレイの変速装置内では各種ギアが高速回転しており、部品がすり減ることで金属片が発生する。会見で木原氏は「ギアは磨耗するもの。当然交換する」と説明。飛行再開に当たって維持整備や点検に力を入れていることから「事故の原因は特定されていると言って申し分ない」とし、「オスプレイの安全性には問題ない」と強調した。

【喜屋武真之介、梅山崇、取違剛、松浦吉剛、森永亨、浅見茂晴】

航空ジャーナリストの坪田敦史さんの話

 米軍は調査報告書の公表前に飛行を再開しており、運用上の注意喚起と操縦士の再教育で安全に運用できると判断したということだろう。故障の根本的原因は報告書に記されていないが、おそらく部品の劣化だ。劣化についてある程度の知見が集まったため、安全性に問題はないと判断したとみられる。

 報告書を読むと、着陸しようとして、左右の「プロップローター」に不均衡がある時に旋回し、バランスを崩して墜落している。今後、岩国基地にも米海軍がオスプレイを配備する予定で、米軍としては配備の前に、死亡した操縦士らの名誉を守った上で「機体の安全性に問題はない」と伝える意図もあったのではないか。

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