茨城県立高校の部活動の運営方針が「原則週休2日」などと厳格化されて2年目。県教育委員会は、条件を満たした学校・部活を対象に適用を緩和する特例措置を2024年度は7校9部について認めた。導入した23年度と比べ9校14部減。実は申請自体が23年度の3割以下に激減していた。県教委が分析するように現場で「理解された」のか。
約20校での反対署名集めや、父母会によるオンライン署名集め――。県教委が22年12月、「平日は2時間程度」「週休1日」などとしていた高校の部活の運営方針を「平日は上限2時間」「原則週休2日(平日、休日各1日以上)」などと改訂すると決めた後に起きた反発だ。週休数は国のガイドライン(指針)に沿ったが、平日の活動時間の「上限」は、2時間「程度」とする国よりも踏み込んだ。
背景にあるのは、急務となっている教員の働き方改革。県教委は「生徒のけがの防止や健康を第一に考えた」(森作宜民前教育長)といった意義も県議会で強調した。だが学校や部活によっては生徒が改訂を知ったのは23年2月に入ってから。導入予定の4月までに練習時間や方法の見直しを迫られた教員や生徒、競技団体などから反対が続出した。
県教委は3月、一転して「準備期間の不足」を認め、新方針の適用を新3年生最後の大会まで猶予。更に5月には、科学的な指導体制▽生徒・保護者への説明と同意▽校長の承認――の3条件を満たし、県教委と専門家の審査で許可を得た部活については、特例的に適用を緩和すると発表した。
新方針を知らずに入学し部活に打ち込みたい生徒の意欲と、生徒や教師の健康を両立させる落としどころとして考案された特例措置。実際に23年度は延べ50校89部が申請した。
ではなぜ、24年度の申請は3割以下の15校18部に減ったのか――。現場を取材すると、複数の教員や生徒が、特例措置発表から間もなく県教委が打ち出した施策を理由に挙げた。
県教委は23年7月までに、「柔軟な運用」として、大会2週間前からと定める土日の連続活動を、「週の活動は12時間以内」という条件付きで、競技によっては最大6週間前から認めると通知した。
23年度は特例措置を認められ、24年度は「柔軟な運用」により大会の2週間以上前から土日連続で活動してきた運動部3年の男子生徒は「特例を受けなくても、大会前は土日とも練習できる。厳格化前も特例措置中も今年度も、時間を管理しながらではあるけれど同様の活動ができている」と語る。
勤務高で各部の特例申請に携わった男性管理職は、自校や情報交換する多くの学校・部活が、24年度は特例措置から申請が不要な「柔軟な運用」に切り替えたと指摘する。一方で「休憩時間などの解釈によっては、22年度以前と同じような運用ができる印象がある」と形骸化の恐れを指摘する。
柳橋常喜教育長は24年6月の定例記者会見で「あえて特例措置でなく、柔軟な対応(運用)で工夫できると理解が進み、申請数が減った」として、「柔軟な運用」の活用は県教委の狙いにも沿っているとの見方を示した。一方で県教委の担当課は各校・部活の活動状況について「ホームページで確認し指導している」として形骸化を否定。24年5月には活動時間を超えて「自主練習」をしたとして1校3部を指導した。
1年以上かけて着地したように見える部活動改革。ただ猫の目のように変わった末の玉虫色の決着に、県立高で運動部を指導する男性教諭は徒労感を語る。「県教委は反発を受けて特例措置を作ったり『柔軟な運用』を導入したり、対応が迷走した。生徒も指導者も振り回された」。部活生活の半分以上が転換期と重なった運動部生徒も「『生徒たちの健康のため』と言いながら、自分たち生徒の声は反映されていない」と、納得できない思いを残している。【川島一輝】
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