『「推し」で心はみたされる?21世紀の心理的充足のトレンド』(熊代 亨 著/大和書房/1760円/208ページ)(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)「推し」はただの流行現象ではなく、私たちの人生を左右するほどの重要な要素だ──。アイドルやキャラクターを応援する「推し活」が若い世代を中心に勢いを増す中、精神科医である著者は、それを人々の心のあり方と結び付けて考察する。

──推し活を考えるに当たって、ファンコミュニティーへの参加や、そこでの仲間意識に注目している点が新鮮です。

近年、サブカルチャーの世界には、「萌(も)え」から「推し」へという大きな変化がありました。

特定の対象に熱中する点は両者に共通しますが、気持ちの表現の仕方はずいぶん違います。萌えの時代に重要だったのは、好きなキャラクターから褒められたい、自分を認めてほしいという「承認欲求」でした。またキャラクターとの1対1の関係性を、それぞれが思い描いていたのも当時の特徴です。

一方、推し活をする人はしばしば「推しが尊い」と言います。遠く高いところにいる存在を、仰ぎ見るような感覚で応援しているのです。「このすばらしい存在を皆で一緒に盛り立てていこう」という共通認識の下、SNSやイベントを通じて推す。そこには明らかに、集団性があります。

息を吹き返した所属欲求

──「萌え」が自己完結的であるのに対し、「推し活」では他者との関わりが生まれやすいと。

この記事は会員限定です。
登録すると続きをお読み頂けます。

ログイン(会員の方はこちら) 無料会員登録

登録は簡単3ステップ

東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。