働く人が子どもたちに教える企業の“出張授業”が広がっています。

国内に約60カ所の結婚式場を運営する「テイクアンドギヴ・ニーズ」が行っているのは、体験型のキッズプロジェクト『T&Gキッズプロジェクト』。

まずは、結婚式には欠かせないブーケ作りです。
準備されたロスフラワーを思い思いに選んで、オリジナルブーケを作ります。

スタッフから「きれいに結ぶ方法なんだけど、グルってしたら2回回します。1個目に作った輪っかの中に2個目の輪っかを入れる。そうすると、きれいでしょう」と教えられた子どもは、「すごい。初めて知った」と感心している様子。

参加した子どもたちは上手にブーケを作っていました。

次はいよいよ挙式体験です。

子どもの「お二人の入場です」というアナウンスで、新郎新婦が現れました。

その後も「結婚指輪を皆さんに見せてください」など、スタッフに扮(ふん)した子どもたちが本番さながらの結婚式を進行していきました。

結婚式のシミュレーションを体験した子どもたちは「楽しかったけど、ちょっと難しかった」「こういうところ(結婚式場)でやったことがなかったから楽しかった」「今までにない体験ができて、すごく楽しかったです」と話していました。

働くことの楽しさや、資源の大切さを学ぶことが目的のこのプロジェクト。

今、企業による出張授業が盛んに行われているんです。

東京・渋谷区立臨川小学校では、「資生堂」による小学5年生を対象にした日焼け予防(紫外線対策)の出張授業『ANESSA Sunshine Project』が行われていました。

「日焼けするとなぜ黒くなるのか?」「予防方法」などについて、企業の専門家が分かりやすく授業を行います。

「山田進太郎D&I財団」が主催しているのは、女子中高生に理系職業に関心を持ってもらう目的で旭化成やNTTなど16の企業や研究機関がオフィスツアーを開催する取り組み『Girls Meet STEM Career』です。

参加した高校生は「理系って頭が良くて数字に強いイメージがあったが、多様性を重要視して会社全体でより良い環境をつくっていると感じた」と話していました。

リアルな体験を通じ、理系への新たな価値観を育てます。

他にも「GMOインターネットグループ」は、渋谷区の小学校に社員を指導員として派遣したり、教材のロボットなどの提供をするなど、ロボットプログラミングのクラブ活動を支援しています。

出張授業を行う企業の業種、またその授業内容は多岐にわたります。

この日、東京・小平市立小平第三小学校を訪れたのは「クラシエ」の社員。
『きれいをたのしむ教室』という出張授業を行います。

今回は小学3年生の約120人が対象で、授業の準備から先生役まで全てをクラシエの社員が担当します。

クラシエ株式会社ホームプロダクツカンパニー マーケティング室 宣伝・販促部 駒村友紀さん:
お子さんのサポートですね。見えるようにとか、集中力切れちゃった子に声掛けとか。

メーカーのクラシエが出張授業を行う理由について、クラシエ株式会社ホームプロダクツカンパニー・プレジデントの上嶋一善さんは「クラシエでは『未来が生まれる教室』というのをやってまして、『おかしで実験教室』や『漢方教室』こういったものを昨年やっていましたが、ホームプロダクツでは『きれいをたのしむ教室』というのを広めていこうということでやり始めました。シャンプーの仕組みとかちょっと化学っぽいものがあるんですが、そういうのを学んでもらって少しでも興味を持ってもらい、将来につなげてもらえたらうれしい」と話しました。

親から離れ、1人でシャンプーを始める年代の子どもたちに、商品の正しい使い方を理解してもらい、同時に商品の良さも分かってもらうのが目的です。

小平市立小平第三小学校 3年生担当・和田翔太先生:
きょうは「きれいをたのしむ教室」という授業です。私たちは今まで何かをきれいにするということは意識していたと思います。ただ「きれいをたのしむ」って一体どういうことなんでしょうね。

小学校の先生からの問いかけで授業が始まりました。

駒村友紀さん:
「きれいにする」とひとことで言っても、いろんな種類があると思いますが、きょうは「髪を洗う」という行動について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

授業は、体を使ったクイズなど45分間。
楽しみながら学ぶことができます。

駒村友紀さん:
皮脂汚れ。汗と一緒に皮脂という油の成分が出てきてしまうので、ちょっとべたべたする。

次はちょっと難しい「成分」の勉強です。

駒村友紀さん:
水は水同士、油は油同士で固まって混ざろうとしない性質があるのですが、水とも仲良くできて、油とも手をつなぐことができる、そんな成分があります。それが「界面活性剤」という成分になります。

実際に水と油が入った瓶と、そこにシャンプーを加えた瓶を振ってみると、子どもたちは「おー」と驚いている様子。
シャンプーの効果を目の当たりにした子どもたちは興味津々でした。

さらに授業では、シャンプーの仕方をマネキンを使って教えていきます。

駒村友紀さん:
お客さまの1人である小学生。そういった生活者の声を聞けるタイミングはなかなかないので、シャンプーのデモンストレーションしたらいい匂いと言ってもらえると、すごくうれしい。家の方にも話したくなるような授業にできたらいい。

授業を受けた子どもたちは、「油とか水がくっつかないのを初めて知って、経験してよかった」「油(皮脂)のことも知らなかったし、寝ぐせについても全然知らなかったから勉強になりました」と話していました。

企業は、社会貢献の一環として無償で出張授業を行うことが多いといいます。

小平市立小平第三小学校・西浦幸三副校長:
学習していることと、その内容を踏まえて企業と連携していくことで学習効果がより高まる。企業は最新の研究データを持っている。最新の情報に基づいた専門的な知識を学習に生かすことができる。

こうした出張授業を学校側が受け入れる理由について、教師では教えることができない専門的な知識を、企業の専門家がサポートすることでより充実した授業が展開できるといいます。

この取り組みについて、クラシエ株式会社ホームプロダクツカンパニー・プレジデントの上嶋一善さんは「ステークホルダーの皆さまとともに、会社も社員も成長するとてもいい機会だと思っています。より良い社会の構築ということに貢献できるというのも一つのメリット」と語りました。

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