筋力向上などの効果があり、健康維持に役立つと注目されるたんぱく質。業界団体が消費者に調査したところ、摂取を望む人は全体の約7割と高い一方で、摂取量は推奨される目標値を下回った。また、健康維持には、たんぱく質の「量」とともに、「質」も重要になると専門家は指摘している。
調査は、食品メーカーでつくる共同事業体「めざせ1日80g!たんぱく摂(と)ろう会」が3月、全国の15~74歳の男女2686人にインターネットで実施した。
主な栄養素の摂取意向を尋ねたところ、たんぱく質は「摂取したい気持ちが若干高まってきている」が19・7%、「かなり高まってきている」が8・8%で、摂取したいと思っているのは計28・5%だった。「元から摂取したい気持ちがあった」という人も44・7%いるため、全体で7割超の人が、たんぱく質を取りたいと思っていることが示された。
また、たんぱく質関連の知識について「知っていた」「なんとなく見聞きした」と答えた人の割合が高かった項目(複数回答)は、最多が「筋力低下を防ぐ」(77・7%)で、「筋肉や臓器の材料として非常に重要な働きをしている」(75・6%)、「運動やトレーニングをしても、たんぱく質を摂取していないと十分に効果が得られない」(74・3%)と続いた。
逆に「聞いたことはない」と答えた人が多かった項目は、「計算能力が上がる」(65・4%)、「集中力アップが期待できる」(53・2%)などだった。最も多かったのは、「摂取量は1950年代と同水準まで低下している」(65・9%)だった。
厚生労働省によると、1日当たりのたんぱく質摂取量の平均値は、終戦から間もない50年代では70グラム程度。ピーク時の95年には80グラムを超えたが、2019年には71・4グラムまで落ち込んでいる。厚労省が示す18歳以上の1日あたりの推奨量(男性65グラム、女性50グラム)は超えてはいるが、これは欠乏により病気にならない最低限度の目安を示している。
早稲田大学スポーツ科学学術院の宮地元彦教授は「筋量や筋力の維持向上には、体重1キロに対し(1日当たり)1・5グラムが目標」と提唱している。体重55キロの人なら、82・5グラムが必要になる計算だ。だが、多くの日本人のたんぱく質摂取量は、体重1キロ当たり0・9~1・0グラム程度にとどまるという。
たんぱく質を80グラム摂取するための食事の目安は、鶏卵10・8個、納豆は9・6パック、鶏のささみなら347・8グラムに相当する。調理が比較的簡単なかまぼこやちくわ、ソーセージといった加工食品からも摂取できる。日本人の食事で、たんぱく質が一番不足する朝食に意識して取ることも有効という。
また、たんぱく質をどの食品から取るかも重要だ。宮地教授は、肉や魚、乳、卵に含まれる「動物性」と豆や雑穀に含まれる「植物性」をバランス良く取ることを勧めている。
「動物性」は、体に吸収されやすく、筋肉や臓器などを作るのに利用されやすい。一方、「植物性」は摂取するエネルギーを低く抑えられ、食物繊維も合わせて取れる。それぞれ特性や含まれる栄養素が異なるため、宮地教授は「多様な種類の食品からたんぱく質を取れば、多様な栄養を取ることができる」と助言している。【嶋田夕子】
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