冷たい食べ物や飲み物を摂取する機会が多い夏。
今年の夏は特に暑く、その頻度も増えそうだ。しかし、冷たい食べ物や飲み物をたくさんとることで胃の働きが落ちてしまうこともある。それが夏バテ、“胃バテ”につながる。
食べやすいそうめんが食卓に並ぶこともあるが、そうめんだけになってしまうことも。そんなときは「豚肉」を添えることで、夏バテの予防が期待できるという。
そう話すのは、東京慈恵会医科大学附属病院栄養部の赤石定典さん。なぜ豚肉が良いのか。豚肉を使った夏バテしないメニューも教えてもらった。
食事の乱れが胃バテにつながる
夏バテの要因は「熱中症による脱水」「室内と屋外での温度差によって、自律神経が乱れてだるさを覚える“クーラー病”」、そして「食事の乱れによる体の不調」。
この3つが考えられると赤石さんは言う。
一番気をつけたいのが、命の危険もある熱中症。これはこまめに水分補給をすることで防ぎたい。
この記事の画像(6枚)そして、胃の不調につながりやすいのが自律神経の乱れだ。今の夏は、室内が冷えていたとしても、外との温度差が大きく、それにより自律神経が乱れてしまう人は少なくない。
自律神経が乱れてしまうと、だるさや疲れを感じ、食事を冷たいものや簡単なもので済ませたくなる。
そうした食事の習慣が胃の働きを弱め、食欲不振につながり、さらには“簡単な食事”として、主食だけになってしまうと栄養バランスも偏ってしまう。
冷たくて主食だけになりがちな、その代表が「そうめん」だ。
冷たく、茹でるだけの手間の少なさで、食欲がないときも選びがちな夏の定番。しかし、「そうめんのみ」といった主食だけの生活が多いと夏バテにつながることも。
「もちろん、そうめんが悪いわけではありません。ただそれだけになると糖質過多なのです。特に夏は甘いアイス、砂糖が加わっている飲み物や食べ物を食べる機会が多いと思います。すると、体内の糖質がうまく代謝されずに疲労が蓄積し、夏バテを起こしてしまうのです」
そうめんに+蒸し豚
そうめんは、簡単に作ることもできるため、常備している家庭も多い。そのそうめんをうまく使いながら、夏バテを避けるためのポイントは「ビタミンB1の摂取」だと赤石さんは言う。
「糖質を効率よくエネルギーに変えてくれる栄養素がビタミンB1。疲労回復にもつながります。うなぎも多いと言われていますが、豚肉が圧倒的なのです」
「そうめんのみ」になりがちなところ、ビタミンB1が多く含まれている豚肉を一緒に食べることで、糖質をエネルギーに変えてくれるそうだ。
そのときに付け加えたい、最適な豚肉メニューが「蒸し豚」。
しゃぶしゃぶにしてゆでるよりも、蒸すことがポイント。ビタミンB1を余すことなくとることができるため、「ゆでるよりもなるべく蒸したほうが良い。そのときに一緒に野菜も蒸すと良いでしょう」と赤石さんは勧める。
特にヒレやモモは脂肪が少ないためビタミンB1が多く含まれているが、赤石さんは「部位にこだわるよりも、まずは食べやすい部位から食べることが大切です」と話す。
また、子供のいる家庭では付け合わせに「ハム」を使うこともあるが、「手軽に食べられますが、塩分過多になり、脱水を助長する可能性もあるのでできれば避けていただきたいです」とのこと。
さらに、豚肉を使った夏バテしない3つのメニューも教えてもらった。
しょうが焼きはタマネギが大事
1つ目は「しょうが焼き」。
夏に食べたい“がっつり飯”だが、赤石さんいわく「しょうが焼きはしょうがが良いのではなく、タマネギがポイント」。
「タマネギやニンニク、ニラといったアリシンという栄養素が含まれている食材も一緒に取り入れましょう。しょうが焼きをつくる際は、必ずタマネギも入れてください」
2つ目は豚肉を使ったスタミナ丼。そこに付け加えたい食材も、上記の理由から、タマネギやニンニク、ニラだ。
「アリシンが含まれている食材は、ビタミンB1の吸収率を10倍に上げてくれます。豚肉とアリシンを組み合わせて摂取することで、糖質をしっかりエネルギーに変えてくれて、夏バテしにくい体になるでしょう」
そして、3つ目は「マーボー豆腐」。
これもアリシンが含まれるニンニクやネギを使い、さらに豆腐が加わることでたんぱく質の摂取もできる。
ただ、食欲不振のときには、なるべく食べたくないと思う人もいるだろう。
しかし、赤石さんは「食べることで胃が活動を始めます。基本的にしっかり食事を取っている人は夏バテしていません。食べられなかったりして、食事の習慣が乱れてくるとバテてしまう。夏バテ予防としてはしっかり食べるということが大事です」と語る。
後編では、“胃バテ”を感じたら「カレー」がいち押しだという理由と秋に向けて取り組みたいことを紹介する。
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赤石定典
東京慈恵会医科大学附属病院栄養部に勤務。管理栄養士として、患者への栄養管理や栄養の重要性を広く伝えるために書籍監修、メディア出演にも関わる。
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