報道公開されたリニア中央新幹線日吉トンネルの工事現場=岐阜県瑞浪市で2019年11月、鮫島弘樹撮影

 岐阜県瑞浪市大湫(おおくて)町のリニア中央新幹線の「日吉トンネル」工事現場付近で井戸の水位などが低下した問題で、事業主体のJR東海は16日、水位低下の原因とみられるトンネル内の湧水(ゆうすい)を止める対策工事の内容を再検討すると発表した。同じ湧水対策をした鹿児島県内の道路トンネルで壁面崩落事故が起きたためという。

 日吉トンネル工事現場では今年2月に湧水が発生し、湧水量は毎秒20リットルに達した。4月に付近の共同水源や井戸などを調査したところ計14カ所で水位の低下が確認された。

 JR東海は5月20日、掘削工事を中断し、代替井戸の整備、観測用井戸の水位調査などを実施。あわせてトンネル壁面にウレタン系薬液を注入し、湧水を止める作業を進めてきた。

 ウレタン系薬液の注入完了(6月6日)を受けて初期段階のコンクリ注入に着手した矢先の7月、鹿児島県出水市の「北薩トンネル」で壁面が崩れて大量の土砂が流入するトラブルが発生。JR東海は、8月末にも開始予定だったコンクリの本格注入に踏み切れば「北薩トンネルと同じ事態が起きかねない」と判断し、本格注入を白紙に戻した。

 JR東海はコンクリの本格注入に代わる工法を専門家と協議中で、対策工事の完了時期は「具体的に示せない」と説明。他方、「早くても2034年以降」としている品川―名古屋間のリニアの開業時期には影響しないとした。【太田圭介】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。