8月下旬となり、学校の新学期が近づいてきた家庭も多いはず。それなのに子供がなんだか疲れているなら「夏バテ」かもしれない。
みやのこどもクリニック(東京・江戸川区)院長で、小児科医の宮野孝一さんによれば、子供は水分が失われやすく、太陽の照り返しによる暑さも感じやすい。夏場は普通に過ごしていても、自律神経のバランスが乱れ、体調を崩してしまうことがあるという。
そのままだと学校生活にも影響が出そうなものだが、子供の夏バテはどうすればケアできるのだろう。体調を整える「4つの習慣」を教えてもらった。
休むなら「適度な涼しさ」が基本
一つ目は「適度な涼しさで休むこと」と、宮野さんは言う。自律神経は暑さだけではなく、7℃以上の気温差を感じることでも乱れやすい。自宅の冷房を効かせすぎると、ちょっとした外出などが負担になってしまうのだ。
この記事の画像(8枚)そのため、冷房の設定温度は「外の気温から6℃以内まで」がお勧め。自律神経の乱れの要因にもなる、スマホやパソコンもあまり使わないようにして、リラックスして過ごしてみるといい。
「冷房は暑いと強くしたくなりますが、下限は26~27℃くらいまでにしてほしいです。夜もつけっぱなしで構いません。体を適度な気温に慣れさせつつ、休みましょう」(以下、宮野さん)
家族で麦茶を飲む習慣を作ろう
二つ目は「水分補給や食事」だ。水分やミネラルが足りない、栄養が偏っていると休んでも疲労感やだるさが取れにくいという。
特に水分は「不感蒸泄」(ふかんじょうせつ)といって、呼吸や皮膚からも失われるので、こまめな補給が望ましい。子供が1日に最低限必要とする、水分量の目安がこちらだ。
【子供が1日に必要とする、水分量の計算式(食事でとる水分も含む)】
・体重が10kg未満=体重1kgあたり100mL
・体重が10kg以上20kg未満=1000 mL +(10kg超過分は1kgごとに+50mL)
・体重が20kg以上=1500mL+(20kg超過分は1kgごとに+20mL)
体重が15kgなら「1000+(5×50)」で1250mL、25kgなら「1500+5×20」で1600mLといった具合だ。ただし計算式はあくまで目安で、汗をかいたりすると、もっと多くの水分が必要なこともある。また、計算が面倒な人もいるのではないだろうか。
宮野さんが勧めるのは、起床後や就寝前、食事やおやつの時間など、1日に4~5回のタイミングで「コップ1杯ほど(150~200mL)」の水分を補給する習慣を作ることだ。
「飲み物はミネラル豊富な『麦茶』がお勧めです。ミネラルウォーターも良いですね。スポーツドリンクはダメではないですが、糖分が含まれるので飲みすぎには注意です」
毎日の食事では、疲労回復に効果的な「たんぱく質」や「ビタミン」を積極的にとるのが、お勧めとのこと。豚肉や夏野菜を「具沢山の味噌汁や豚汁」にすると、冷房で冷えた体を温めつつ、さらっと食べやすいという。また、レモンや梅干しに含まれる「クエン酸」は胃腸の調子を整えるので、サラダなどに使ってもいい。
生活を“学校モード”に戻そう
三つ目は「不規則な生活の見直し」をすることだ。夏休みは夜更かしをしたり、好きなときにご飯を食べたりするので生活リズムも崩れやすい。
心当たりがあるなら、1日の過ごし方を徐々に“学校モード”に戻してみてほしい。「今日は8時に起きる、明日は7時30分に起きる」などと、起床や就寝や食事のタイミングを20~30分ずつ戻していくと、無理なく、生活リズムを整えやすいという。
併せて、宮野さんが勧めるのは「朝日を浴びる」ことだ。気分がすっきりして、自律神経を整える効果も期待できるという。散歩やラジオ体操ができると、お腹が空いて、朝食がおいしく感じる“良いサイクル”に入りやすい。
子供が一人で過ごす時間に注意
宮野さんは親が忘れがちな注意点として、四つ目の「子供が一人になったとき」をあげた。親が働いていると子供は一人になることもある。そこでの過ごし方が乱れると回復も遅れるので、次のことを伝えてあげてほしいという。
・自宅に帰ってきたらコップ1杯の水分をとる
・冷房は低くしすぎない(26~27℃まで)
・アイスは食べすぎない(1日1個まで)
・外出時は水筒を持つ(麦茶か水がお勧め)
・外出時はクールリングやハンディファンも活用する
子供も体調が万全だと、勉強や部活でスタートダッシュを切れそうだ。家族一丸となって、夏の疲れを撃退してみてはいかがだろうか。
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宮野孝一
帝京大学医学部卒業、弘前大学大学院修了。弘前大学医学部附属病院、関連病院などで勤務する傍ら、小児白血病や骨髄移植などの診療と研究に従事する。墨田区賛育会病院、江戸川区池下クリニックを経て、1998年にみやのこどもクリニックを開業。「わかりやすい説明」を診療のモットーとして、25年以上にわたり、地域のかかりつけ医として活動する。医学博士、日本小児科学会認定専門医、 日本アレルギー学会認定医。
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