ヒグマの毛皮を裏返し、脂肪などの除去作業を行う学生たち=北海道帯広市の帯広畜産大学で2024年8月7日、鈴木斉撮影

 北海道幕別町の忠類ナウマン象記念館と帯広畜産大学(帯広市)が町内で捕獲されたヒグマの全身骨格の標本製作に共同で取り組んでいる。「皮なめし」と呼ばれる毛皮加工も学生たちが行い、来年3月までに記念館に並べて展示する。ヒグマの骨格標本は道内で数体しかないとされ、記念館の添田雄二学芸員は「ヒグマが次々に駆除される中、せめて教材として活用したい」と話す。【鈴木斉】

 骨格標本になるのは2021年8月、幕別町忠類地区で箱わなによって捕獲、駆除されたメスの成獣(体長143センチ)。すぐに記念館が活用を申し出て、解体された骨を町有地の土中に埋め、毛皮を冷凍保存した。

 添田学芸員と帯広畜大獣医学研究部門の冨安洵平助教、主森亘特任研究員が骨格標本の共同製作を企画。今年6月、学生サークル「畜大えぞほね団」と解剖学を学ぶ学生も加わり、骨を掘り出して洗浄作業などを始めた。

 同時に、解凍した毛皮から脂肪分などを取り除き、腐敗や臭いの防止措置を施す「皮なめし」作業も開始した。脂肪などを除去して洗浄。1カ月以上も水分に漬け込み、十分に乾燥させて柔軟性を付与する工程を経て、12月ごろに完成予定だという。

 作業は今月7日、報道陣に公開された。学生たちは黒々とした剛毛に覆われた毛皮を作業台の上で裏返し、独特の臭いに包まれながら、張り付いた脂肪や肉片などを医療用メス、ハサミで丹念に除去した。皮なめし担当リーダーの畜産学部3年、桧山志歩さん(21)は「ヒグマはシカなどのようなほかの動物よりも脂肪分が多く、取り除くのが大変だが、貴重な体験です」と話した。

 畜大えぞほね団の有川慶彦団長(畜産学部3年)は「脂肪の色や臭いなどを確認できる標本づくりの意義は大きい」と述べた。

 幕別町忠類地区では、1969年に農道工事現場でナウマンゾウの化石の一部が見つかり、翌70年の発掘調査でほぼ1体分の骨格化石が発見された。記念館は化石発掘を記念して88年に開設された博物館で、復元骨格など関連資料が多数、展示されている。

 今回のヒグマの骨格標本作製は、12万年前に北海道にいたとされるナウマンゾウと同じ時代から生息するヒグマへの理解を深めてもらうのが狙いだ。添田学芸員は「全身骨格と毛皮を合わせて展示することで、生態などを理解しやすくなり、子どもたちの勉強にもなる」と語った。

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