耳にかけるタイプの補聴器=東京都千代田区で2023年1月26日、渡辺諒撮影

 聴力が同じでも、高齢者ほど言葉を聞き取る能力が低下していることが大規模なデータ解析でわかったと、東海大などの研究チームが21日発表した。音自体は聞こえていても、言語化する機能が衰えて起こる「隠れ難聴」の可能性が示唆される。

 聴力検査には大きく2種類ある。一般的な検査(純音検査)は、音の高さと大きさを組み合わせ、聞こえたかどうかで軽度~重度の難聴を判定する。一方、医療機関などで行う語音検査は、言葉の聞き取りやすさを調べるもので、仮名を1文字ずつ聞かせて正答率を測る。

 チームは国立病院機構東京医療センター(東京都)が2000~20年に集めた、両方の検査をした2760人の左右の耳のデータを解析した。

 すると、純音検査で同程度の難聴とされても、語音検査は高齢になるほど正答率が下がっていた。語音検査の正答率をみると、軽度難聴では10~39歳の平均が92・2%だったのに対し、90~99歳では71・8%。中等度難聴では10~39歳で85%だったが、90~99歳では53・4%だった。語音検査では正答率5割が聴覚障害の基準の一つとされる。

耳にかけるタイプや耳に入れるタイプの補聴器=東京都千代田区で2023年1月26日、渡辺諒撮影

 耳で音を調整したり、脳で音を解析したりする機能が、加齢に伴って低下している可能性があるという。チームの和佐野浩一郎・東海大准教授(耳鼻咽喉(いんこう)科学)は「一般的な聴力検査だけでは、会話への影響を見極められない。語音検査で正答率が低い場合には、聴力が年相応だとしても補聴器の利用を検討してほしい」と話した。

 成果は英科学誌コミュニケーションズ・メディシン(https://doi.org/10.1038/s43856-024-00587-8)に掲載された。【渡辺諒】

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