北海道・知床半島=本社機「希望」から手塚耕一郎撮影

 世界自然遺産・知床(北海道斜里町、羅臼町)に携帯電話基地局を整備する国などの事業について、環境省は希少な猛きん類オジロワシへの影響を2025年夏まで調査する必要があるとの助言を事業者に伝えた。法的拘束力はないが、助言に従う場合、工事再開は来年秋以降になる見通し。

 助言は、専門家で作る「知床世界自然遺産地域科学委員会」がまとめ、同省が16日に通知した。

 事業は総務省と地元自治体、KDDIなど国内通信大手4社が知床半島の4カ所で進めている。知床岬には太陽光パネル264枚が並ぶ発電施設(約7000平方メートル)を建設する計画で、今年5月に着工した。

 これに対し科学委の委員から、国の天然記念物で絶滅危惧種のオジロワシの営巣木が工事予定地の近くにある可能性が指摘され、事業者は同月、工事を中断。国などは動物への影響調査をしておらず、科学委は6月、「事前調査が不十分」と指摘していた。

 オジロワシの繁殖期は春から8月ごろで、今季の調査はすでに難しい。そのため、助言では繁殖状況やつがいの行動把握の調査を来年4~8月に月3回程度行う必要があるとしている。

 基地局は当初、来年春に運用を始める予定だったが、1年以上遅れる可能性がある。工事を担当するKDDIは「環境省に詳細を確認しながら対応を検討する」としている。【山口智】

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