米大統領選の共和党副大統領候補が民主党の候補者や政治家らについて「子供のいない猫好き女性」が「みじめな人生を送っている」と過去に発言したことが話題になっている。未来に利害関係がない政治家が国を動かしている、との批判だ。子供がいない女性をやゆする発言は世界中で繰り返されてきたが、またかという思いである。

批判の対象となった政治家たちは継母として夫やその前妻と子育てに励んだり、ゲイのカップルとして双子の養子を取ったりしている。子供がいない人生を選んだわけではない。それ以前に問題なのは、子供がいない女性は政治に参加する資格がないと切り捨てていることだ。案の定「猫好き女性」発言はメディアやSNSで炎上し、子供がおらず猫好きで知られる歌手テイラー・スウィフトさんのファンなどから激しい非難の声が上がっている。

日本でも女性を子を産む道具と捉え、産まないと存在価値がないような発言をする政治家が後を絶たない。「子供を産まない女性を税金で面倒見るのはおかしい」との発言が過去にあったが、最近でも少子化が進むのは出産しない女性のせいとの意見を耳にする。

子を持つ、持たないは個人やカップルの自由だ。前世紀から国際的に認められてきた権利について今更語らざるを得ないのが歯がゆい。産みたくても産めない人の中には、経済的な理由や仕事と育児の両立が難しいために、産まない選択を強いられる人も多い。少子化に歯止めをかけるには、このような人達からお金や生活の不安を取り除くことが急務だ。不妊のカップルへの支援をさらに充実させることも大切だ。

同時に、子を持たないと決めた人達が、差別されることなく、堂々と充実した人生を送れる社会にすべきだ。昨年、国が発表した推計によると、生涯にわたって子供を持たない人が現18歳で女性は最大42%、男性では5割程度になる可能性があるとのこと。これは先進国でも突出した数字だ。若者の将来への不安を重く受け止めるとともに、多様な生き方を尊重できる世の中を目指したい。

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