全国的な課題となっている教員の確保策が27日、文部科学相の諮問機関・中央教育審議会(中教審)で取りまとめられた。処遇改善と働き方改革の加速、学校の指導運営体制の充実という3本柱だが、教育現場には実効性を不安視する意見も残る。「給料より人を増やして」「これで過労死はなくなるのか」。現役教員の有志らが、中教審の文科相への答申に合わせて記者会見し、懸念の声を上げた。
「給料だけの問題ではない。仕事を減らしてほしい」。東京都千代田区の文科省内で開かれた記者会見で、川崎市立小学校教諭の斎賀裕輝さん(30)はこう語った。
過去に過重労働で体調を崩したことがある。児童と向き合うためには定時で帰り翌朝までに体調を整えたいが、仕事のために帰りが遅くなる日も多いという。「教員は何でも屋。事務仕事も多く、カウンセラーのような役割も、子どもに何かあったときに駆け付ける役割もある」
中教審の答申には保護者対応のための体制構築や支援スタッフの増員といった教員の負担軽減策も示されているが、期待感は小さい。ここ数年は外国語の指導、児童に1人1台配備された端末の活用といった新たな業務を任されるようになったとし、「授業の内容と量が莫大(ばくだい)。放課後のトラブルへの対応など、授業外の業務も増えている」と話した。
岐阜県立高校教諭の西村祐二さん(45)は、教員に残業代が支払われない代わりに給料月額の4%を一律支給してきた「教職調整額」の引き上げに伴う効果を疑問視。支給割合を13%にする文科省の方針について「現場のために頑張ろうとしていると受け止めており、文科省の努力を腐したくはない」とした上で、「教職調整額を増やした場合、これまで以上に頑張ってほしいと管理職や社会全体から期待される可能性がある」と指摘した。
答申には若手をサポートする新たな職の創設も盛り込まれている。西村さんは新ポストを導入した場合に従来の教諭職の給与に影響が及ぶ恐れについても言及し、「教職調整額を上げる財源を確保するため、教諭の基本給が下がるのではないか。国には、基本給を下げないと約束してもらいたい」と求めた。
働き方改革のコンサルティングなどを行う「ワーク・ライフバランス」(東京都)の小室淑恵社長は「この答申によって過労死はなくなるのか」と問題提起。教員の過労死を把握する仕組みがないとし、実態を公表する仕組みを構築すべきだと提言した。
その上で、教職調整額を規定した「教員給与特別措置法(給特法)」の下では教員の残業がコスト換算できず、業務削減の指示を出すことで管理職や教育委員会が評価される仕組みもないとし、給特法の抜本的な改廃を訴えた。【斎藤文太郎】
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