秋田県大仙市に70年にわたって営業を続ける菓子店がある。定番商品に加え、ユニークな新感覚スイーツを次々と生み出している3代目店主の思いを取材した。

大仙市のJR刈和野駅近くにある菓子店「和栄堂」。2024年に創業70年を迎えた。

この店の3代目として菓子作りに励んでいるのが佐藤勇弘さん。高校生の頃に店を継ぐことを決めたという佐藤さんは、高校卒業後、都内の製菓専門学校で学び、横浜市のケーキ店で3年間修行を重ねた。そして16年前に古里に戻り、店を切り盛りしている。

子どもの頃から見ていた家業の菓子作りだが、いざ自分でやってみると大変さを実感したという。

 和栄堂3代目・佐藤勇弘さん:
「やっぱり父はすごいことをやっていたんだなと思った。簡単に作っていると小さい頃は思っていたが、大人になってみると、すさまじい数の工程があったんだなと、帰ってきてから思った」

昔からの味を守りながらも商品は進化を続けている。

和菓子や洋菓子など豊富な種類の菓子が並ぶショーケースの中でも、ひときわ目を引くのが「ジャーケーキ」だ。

何層にも重なったフルーツやクリームがかわいらしい「ジャーケーキ」は、4年前にコロナ禍で遠のいた客足を呼び戻そうと佐藤さんが考えた。中でも「めろめろメロンのジャーケーキ」は、ふわふわで濃厚な生クリームと、メロンとレアチーズのさわやかな味わいが絶妙なバランスだ。

一方、50年以上愛されている看板商品もある。ソフトクリームをマイナス20度の冷凍庫で一晩じっくり凍らせた、その名も「かだいほう」。1日に150本以上売れる日もある。

当初はやわらかい一般的なソフトクリームも並んでいたが、凍らせた“かたい方”のソフトクリームを買いに来た客が、秋田弁で「かだいほう」と呼び始め、この名前が定着した。

ユニークな商品は他にもある。その名も「コーヒーの刺身」。コーヒー味のこんにゃくゼリーに、弁当用などの調味料入れに入った生クリームをかけて、刺身のように食べるのがおすすめだ。

さらに、この夏の新作「水ようかん味彩(あじさい)シリーズ」は、種類が豊富で見た目も華やか。さっぱりとした味わいは暑い夏にぴったりだ。

3代目が考え出すユニークな商品の数々に、一緒に作っている父で2代目の和弘さんは、初めは戸惑ったという。

 和栄堂2代目・佐藤和弘さん:
「最初はどうかなと思っていた。だけど今はSNSの時代なので、新しいお菓子をどんどんやってくれて助かっている。新しいお菓子を作るのは楽しい」

 和栄堂3代目・佐藤勇弘さん:
「最近エクレアや水ようかんも認めてくれるようになったので、『何か面白いものはないかな』とずっと2人で考えている。1人で作るよりもはるかにためになることも多いし楽しい」

親子二人三脚で作る和栄堂の菓子。菓子作りへの思いを聞くと、佐藤さんは「やっぱり一番感じてもらいたいのは『おいしい』と『面白い』。できるだけ外のお客さんにも来てもらえるようにしつつ、地元のお客さんの食べたいものをひたすら作って、その地元のお客さんの好きなものを外から来たお客さんにアピールする。そういう仕事にしたい」と語った。

創業から70年。地域に根付いた菓子店は、これからも手作りのお菓子で地域の人々を笑顔にする。

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