乗ってきた花咲線の乗客に向かって手を振る参加者=JR厚床駅で2024年9月1日、本間浩昭撮影

 JR北海道が「単独では維持が困難な線区」と位置付けるJR花咲線の利用を増やそうと、愛好家らでつくる「夢空間☆花咲線の会」(鈴木一雄代表)は1日、「花咲線で行く自然と歴史を学ぶ体験乗車の旅」を行い、市民ら26人が日帰りツアーを満喫した。【本間浩昭】

 この日は雨上がりの抜けるような青空だった。根室駅を午前11時過ぎに出発した2両編成の「快速はなさき」は、窓が開く昔ながらの気動車。車窓からは、左に太平洋、右にトドマツ林が続き、「地球探索鉄道」の名に恥じない雄大な大自然の中を列車は進んだ。

 厚床駅で貸し切りバスに乗り換え、一行は旧国鉄標津線の奥行臼(おくゆきうす)駅の廃線跡でトロッコに乗り、集乳管で生乳を運んでいた半世紀前の簡易軌道の時代に思いを寄せた。別海町教育委員会は夏休み中の日曜を「夏休み奥行臼トロッコサンデー」、毎月16日を「トロッコの日」と定め、体験乗車を行っているというが、今回のツアー参加者のほとんどが「知らなかった」と話し、「今度は孫と来たい」などと歓声を上げた。

入植が進んだ時代の面影を残すトロッコに乗る参加者=北海道別海町の「新奥行臼駅」で2024年9月1日、本間浩昭撮影

 奥行臼駅の付近はかつて交通の要衝で、明治末期~昭和初期に根釧台地に移住者が入植する際の拠点として栄えた。宿泊と人馬の継ぎ立てが行われた「旧奥行臼駅逓(えきてい)所」が国指定史跡として残されている。ツアーの参加者は、別海町文化財保護審議会の川村俊也会長から駅逓所の果たした役割などについて詳しく説明を受けた。

 参加した根室市議会副議長の工藤勝代さん(59)は「歴史上貴重なものがきちんと残され、次の世代に伝える仕組みができていた」と目を見張っていた。

 今回の旅は「令和6年度根室市花咲線普及促進助成金」を利用した。参加者も根室―厚床間のJR運賃970円を自己負担して沿線と近郊の旅を満喫し、貸し切りバスで根室駅に戻った。

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