ある日、パートナーが政治家になったら…。女性の政治家がまだ少ない中、妻が議員に転じたことで、生活スタイルが一変した夫婦がいる。本多夏帆さんと祐也さんだ。2015年に結婚、その後は、夏帆さんは行政書士・社会起業家として仕事の傍ら、家事・育児もこなすという多忙な日々、一方の祐也さんはIT系企業社員として、深夜残業や出張も多い働き方だったという。2019年に夏帆さんが武蔵野市議会議員に当選したことをきっかけに激変。祐也さんが家事・育児を主に担当することになり、働き方も変えた。
【映像】家事・育児をこなす本多祐也さん
政治家となった妻を全力で支える一方で、「仕事に100%注力している人を見ると、羨ましくないわけではない」という葛藤もある。『ABEMA Prime』では、夫妻とともに、政治家を支えるパートナーの苦労、さらに共働きの理想の姿を考えた。
■妻が政治家に!立候補を決めてから2カ月後に当選、生活が一変
もともと政治家志望でもなかった夏帆さんが、その道に進むことになったのは2019年のこと。家事・育児に忙しく、また自分で会社経営もしていたところに、市議会議員の誘いを受けた。「時間がない中で決断をしなきゃいけない状況もあった。実は1回はやりたくないと言った。私も会社をやっていて、ちょっと厳しいと思った」。妻が政治家となることに、夫が反対するケースとして「家族ブロック」と呼ばれるものがあるが、本多さん夫妻はそうではなかった。「夫がやった方がいいと言ったので、それが後押し」と、2019年の2月に決断し、4月に出馬。見事当選を果たした。
夫・祐也さんは、なぜ背中を押したのか。「私自身にはそういう声がかからないので、シンプルに『すごいな』と思ったのが一つ。あと、彼女自身がすごく正義感があるし、バイタリティに溢れている。チャンスがあるならやってみたら、と応援した。その時は、仕事のウェイトとかの話は特になく、もう本当に過密スケジュールだったので準備に奔走した」と振り返った。当選後には会社を転職、自分のキャリアも活かしつつ、より家庭をしっかりバックアップできる環境を整えた。それまで家事・育児は夏帆さんがほぼワンオペでこなして「めちゃくちゃストレスだった」ところ、今度は祐也さんがその役割をこなすようになった。
■少ない女性政治家「開拓者のつもり。ブルドーザーのようにやっている」
「政治家の夫」という立場の人に、日本ではなかなか出会えない。祐也さんも「すごく珍しがられる。『なんなんだろう』『想像できない』みたいな。妻がSNSとかで誹謗中傷されると、子どもが将来それを目にしたらどうなるんだろうと心配」という。夏帆さんも「いろいろなご意見をいただくが、家族のことを言われたり、身の危険を感じるようなことがあると、どうしようとなる」と悩む。それでも夏帆さんは、女性政治家が増えてほしいという思いが強く「開拓者のつもりで、ブルドーザーのようにやっている。2人目と3人目の子どもは任期中に生んでいるし、周りも『赤ちゃんが議会にやってきた』みたいな感じで徐々に慣れていく。2人目の時はみんな驚いていたけど、3人目の時は私が知らない間に抱っこされていた」と語った。
妻を支えるためとはいえ、自身の仕事が大きく変わったことに祐也さんなりの葛藤はある。「中途半端な状態で仕事が中断されて、家庭の事情で帰らなきゃいけないという時がある。今まではコミットしていた人間が、仕事を切り上げて帰る申し訳なさも感じる。ただ世の子育て夫婦には葛藤があるし、折り合いをつけてやっている」。夏帆さんも、そのサポートに対しては感謝し、政治活動を続ける上で「おそらく誰かのサポートが必要。うちの場合は夫だけじゃなくて、夫の母親や私の母親、妹などにお願いしている状況。誰かが手伝ってくれる状況じゃないと、なかなかこの仕事をするのは難しいが、それは男女どっちでも一緒」とした。
また元明石市長・泉房穂氏も「どちらにしてもハードルを下げていかないと。普通の生活をしながら、ある日突然、政治家になれた方がいいと私は思う。女性の政治家は明らかにここ数年で増えてきている」と述べた。
■理想の夫婦、再現性は?「どうしても『すげえ』と思ってしまう」
奮闘する本多夫妻だが、これでは女性の政治家を増やすためのモデルとしては「再現性に乏しい」としたのがリザプロ社長・孫辰洋氏だ。2人の関係を理想的な形としつつ「女性議員を増やす、かつ子育てと両立する、かつ旦那さんのキャリアも大事にするのは不可能に近いのでは。男性として、どうしても『祐也さん、すげえ』と思ってしまう。理解がある夫、理解がある実家、理解がある職場、この3つの条件が揃ってないと成立しない。それに例えば祐也さんが『俺もキャリアを追求したい』となった時にどうするのか?」と指摘した。
これに夏帆さんは「常にディスカッションしている。今、夫がキャリアの部分で仕事も一生懸命やりたいという状況になったとして、私が議員の仕事をセーブするのはなかなか難しいが、その他のことをセーブする。子育てを誰かに手伝ってもらうかとか、そこは常にディスカッションを続けている。正解は確かにないが、いろんなパターンがある」と答えた。また、泉氏も「去年、明石市の市議会議員で、女性2人が立候補、圧勝したが、口説いた時の私のセリフは『もうそのままの生活でやったらいいよ』。別に過度なことをしなくていいし、議会の古いしきたりに従わなくてもいい。逆にそれに意味がある」とも語った。
■共働きに「どちらかが我慢しなきゃいけないシステムは変えるべき」
一方、PIVOTプロデューサーの国山ハセン氏は「一般的な共働きとあんまり変わらないのでは?」と話す。キャリアへの葛藤について「これは逆に言えば、今までずっと男性議員のパートナー、妻が感じていたことではないか。女性の議員がいて、そのパートナーがサポートをしている実情から見えるのは、ある意味の押し付けでは」と述べると、テレビ朝日・田中萌アナウンサーも「普通の共働きでも男女関係なく、どちらかが時短勤務にしたり、融通の利く在宅ワークの仕事に変えたりしている。誰かに頼るのももちろん大事だが、どちらが我慢しなきゃいけないという社会のシステムが変わればと思う」と続いた。さらに泉氏も「政治家が頑張るために、夫婦のどちらか一人が我慢するというのはやっぱり違う。我慢しなくてもいいように変えた方がいい」と加えた。
この話を受けて祐也さんは「妻の仕事に興味を持って、納得感を持って応援していれば、やはりサポートしようという気持ちが芽生える。子育てや家事に関しては、他の人に『助けて』としっかり言って理解を求めることが大事。他の子育て世帯もみんな同じような状況かなと思う」と締め括っていた。
(『ABEMA Prime』より)
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