「健康のタネ」のコーナーでは今回、「自閉スペクトラム症」を取り上げます。自閉スペクトラム症と上手く付き合っていくためには、できる限り幼いころに発見することが重要です。どんな特徴があるかや、気づくためのサインを専門医に聞きました。
  
自閉症やアスペルガー症候群などをまとめた診断名「自閉スペクトラム症」について、長きにわたり子どもを診察している、福井大学子どものこころの発達研究センター・センター長の松崎秀夫教授に話を聞きました。
 
松崎教授は自閉スペクトラム症について「昔は発達障害といい、今は神経発達症というが、コミュニケーションが不得手であったり、特定の物事にすごくこだわりを持つ特性を備えていて、社会で困難を感じている人たちを診断するときに使う言葉」と説明します。
  
自閉スペクトラム症は、80年ほど前にカナダで初めて報告された、比較的新しい概念だと松崎教授は話します。医療の発達などに伴い、世界中で診断される人が増えていて、現在、日本では5歳児の約3.2%が「自閉スペクトラム症」と診断されています。

代表的な特性としては▼コミュニケーションが苦手なこと▼特定の物事に対してこだわりが強いこと、などが挙げられます。他にも、五感が鋭い傾向にあり、特定の音や光が苦手で、食べ物の好き嫌いが多いほか、中には触覚が鋭いためにシャワーが浴びられない人もいるということです。
 
特性について松崎教授は「自閉症の人には、自分が思い通りにならないと気分を爆発させてしまうことが非常に多く、特に幼少期には、それで育児に手を焼く親の姿がよく見られる。そして、大人になってもそういう特性を持つ」と話します。
 
詳しい原因はわかっていませんが、妊娠中の免疫システムの異常が発症に関係していると言われています。
 
福井大学などの研究グループは2024年7月、出産直後に採取されるへその緒の血液(臍帯血)の中にある特定の脂肪酸が、発症と関係していることを突き止めました。「研究が進めば、この脂肪酸の濃度を測定することで、子供が将来自閉スペクトラム症の特性を備えるかどうかを予測できるようになる可能性がある」とします。
 
自閉スペクトラム症は多くの場合は、小学校での学校生活で周りになじめないことで発覚しますが、早ければ2~3歳で診断されることもあります。改善に特化した薬は存在しませんが、幼いうちのトレーニング「療育」を受けると特性は軽減することが分かっています。
 
療育が効果的なのは遅くとも小学校低学年までと松崎教授は強調。早期発見につなげるサインについては「顕著な子供だと、明らかに周囲の子供と遊ばないとか、自分の好きなものに固執して並べて遊んでいるなどをきっかけに、外来で診断を受けるケースは多々ある」とします。
 
乳幼児健診や幼稚園で指摘を受けたり、子供の行動に違和感があったりする場合は、早めに小児科を受診することが望ましいということです。
 
松崎教授は「家族や本人が受診を頭から拒否するケースがあるが、受診したからと言って必ずしも診断をつけるわけでない。外来を受診すること抵抗感を持たず、気軽に来て欲しい」と呼びかけます。
 
こだわりの強さや特化した才能を持つ「自閉スペクトラム症」は、社会に出てから大いに役立てることもできます。上手く付き合っていくためには、家族や学校など周囲の理解が求められます。
 
※松崎教授の崎は立つ崎

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