ご当地ギョーザなどの冷凍食品が並ぶ@フローズン=名古屋市南区のイオン新瑞橋店で

 長期保存が可能で、便利でおいしい-。新型コロナ禍を経て、加工済みの冷凍食品の人気は一層高まった。有名店が監修した商品などを取りそろえた巨大な専門店や、自分たちで温めて味わうレジャー施設のレストランも登場。毎日の食事に冷凍をうまく活用する方法を考えるシリーズの2回目では、冷凍食品を巡る現状を追った。 (古根村進然)

■「中食」が定着

 有名店監修のピザやラーメン、オーストラリアの国民食とされるミートパイ…。8月、イオン新瑞橋(あらたまばし)店(名古屋市南区)にある冷凍食品専門店「@FROZEN(フローズン)」には、62台の冷凍庫がずらりと並んでいた。国内最大級の約1500品目をそろえ、7月に東海地方では初めてお目見えした。  食品課長の安松克晃さん(37)は「ご当地ギョーザなどがあり、家庭で旅気分を味わえることも好評」と言う。家族4人で訪れた男性会社員(37)は「ピザやキッシュなどキャンプやホームパーティーに合う商品も多い」と驚いた。  イオンリテール(千葉市)は、@フローズンを2022年8月に千葉県内に初めて出店し、これまでに関東地方を中心に計9店舗を展開。朝食やおつまみなど「あらゆる食シーン」に対応し、フランスの冷凍食品専門店「ピカール」の商品を扱っていることも売りだ。コロナ禍で「中食」が定着したなどとして、今月中に静岡県富士宮市や大阪府にも出店する予定。広報担当者は「豊かな食卓を日常的に提供していけるようにしたい」と話す。

冷凍食品を購入し、自分たちで温めて楽しむレストラン「オンド」=三重県志摩市で(近鉄リテーリング提供)

 三重県志摩市のアクティビティリゾート施設「志摩グリーンアドベンチャー」内には、好みの冷凍食品をその場で味わえるレストラン「ON°(オンド)」が7月に登場した。パスタや焼き肉弁当など約70種類を扱っており、来店者は商品を購入し、電子レンジで温めて食べる。食品は一つ300円台から800円台まで。  運営するのは、近鉄沿線の物販・飲食業を手がける近鉄リテーリング(大阪市)。人手がかからない上、冷凍食品が消費者により身近になったとして、この形態を試みたという。各地で冷凍食品の食べ放題イベント「チン!するレストラン」を開くなど、冷凍食品市場の活性化に向けて取り組んでいる食品総合卸の日本アクセス(東京)の協力を受けている。近鉄リテーリングの担当者は「今後は、高速道路のサービスエリアでの展開も検討したい」。

■主食+おかず

 冷凍食品メーカーなどでつくる一般社団法人「日本冷凍食品協会」(東京)によると、家庭用の生産量は13年に約63万トンだったが、23年には約75万トン(速報値)にまで増えた。それぞれが好きな物を食べる「個食」が進んだことや、共働き世帯の増加が背景にあるとみる。  こうした中、注目されているのが、主食とおかずなどを組み合わせたワンプレートの冷凍食品。食品メーカー、ニップン(東京)の推計では、ワンプレート商品の購入額は19年度に約58億円だったが、23年度には3倍近い約168億円にまで膨らんだ。  同社は、15年3月に主食と主菜などを組み合わせた自社ブランドの「よくばりシリーズ」を発売。現在はパスタとハンバーグ、ご飯ととんかつの組み合わせなど16種類を展開する。具材の配置やソースのかけ方などを工夫し、加熱時にプレート内の食品が同時に出来上がるようにしている。価格は400円台で、30~40代の子育て世帯に好評だ。  23年度のシリーズの売上高は約80億円で、19年度の約3・4倍。担当者は「冷凍食品が家庭にとって当たり前の存在になるようにしていきたい」と意気込む。

◆セカンド冷凍庫 小型の製品人気

 家庭で冷凍した食品の活用が広がる中、一体型の冷凍冷蔵庫とは別に、小型冷凍庫を「セカンド冷凍庫」として使う動きが注目されている。  電機メーカーでつくる一般社団法人「日本電機工業会」(東京)によると、家庭用冷凍庫(一体型を除く)の出荷台数は2014年度に14万6千台だったが、23年度には40万6千台と約2.8倍に。買いだめし買い物の回数を減らすなどの理由で、コロナ禍に需要が高まった影響が大きいという。

80リットルの容量のあるスリム冷凍庫(アイリスオーヤマ提供)

 さらに、生活用品メーカーのアイリスオーヤマ(仙台市)は、ふるさと納税の返礼品として受け取った食品や、会員制量販店や業務スーパーの大容量商品が人気を呼んでいることも需要増の背景にあるとみる。  同社は、19年から小型の冷凍庫の販売を開始。約20種類を取り扱う。特に人気なのが容量66~120リットルの「スリム冷凍庫」だ。一般家庭の限られたスペースで容量を確保するため、高性能の断熱材を使用。庫内の壁を薄くするなどした。販売価格は4万9千円前後~7万1千円前後を想定する。広報担当者は「幅広い商品を展開し、消費者の生活スタイルの変化に寄り添いたい」と話す。


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