9月は蚊の活動が活発になるシーズン。刺されると、かゆみで気が散ったり痕になったりとやっかいだが、まれに、より重い症状や体調不良を引き起こすことがある。 

害虫防除技術研究所所長で医学博士の白井良和さんは、「小学校低学年くらいまでの子供が蚊に刺されて異常に腫れる場合は、『小児ストロフルス』かもしれません。また、蚊に刺されて高熱が出る場合は、『デング熱』か『蚊刺過敏症(ぶんしかびんしょう)』の可能性があります」と話す。 

小児ストロフルス 

子供が蚊に刺されて異常に腫れてしまって心配になった人はいないだろうか。白井さんによれば、「小児ストロフルス(急性痒疹)」という症状の可能性がある。 

「蚊などの唾液に過敏に反応して、痕が異常に赤く大きく膨らむ症状で、8歳くらいまでの子供に起こります。免疫反応である『遅延反応』が過剰に出てしまっている状態と言えます。遅延反応は、一度腫れが引いてもう一度赤く腫れ、長くかゆみが続く反応です」(以下、白井さん) 

白井さんによれば、「小児ストロフルス」は8歳くらいまでの子供が発症する(画像はイメージ)
この記事の画像(5枚)

ただし、「それほど深刻に心配する必要はない」と続ける。 

「対処にはかゆみ止めを使いますが、かゆみが強い場合や熱が出ている場合は皮膚科を受診してください。なお、小児ストロフルスは学年が上がっていくとともに自然に発症しなくなっていくものなので、あまり心配しすぎなくても大丈夫です」 

デング熱 

デング熱は、蚊がデングウイルスを媒介する感染症。発症すると高熱や発疹、嘔吐などの症状が出て、まれに重症化した場合は治療が遅れると命にかかわる。日本では直近で2019年に感染が確認されている。コロナ禍以降、国内での感染例はないが、白井さんは「いつ発生してもおかしくないですよ」と注意を促す。 

デング熱を媒介することもあるヒトスジシマカ(画像提供:白井良和さん)

「デング熱は、感染者を刺した蚊がウイルスを取り込んで、さらに他の人を刺すことで広がっていきます。日本のヒトスジシマカもウイルスを媒介します。今はコロナ禍も明け、海外からの人の移動も活発になっているので、注意したほうがいいでしょう」 

厚生労働省は、蚊に刺されてから3~7日程度で高熱のほか、発疹、頭痛、骨関節痛、吐き気、嘔吐などの症状が出ればデング熱の可能性があるとして、デング熱を疑う症状があれば、近くの医療機関にかかってほしいと呼びかけている。また、海外からの帰国後に症状が出た場合は、受診の際、海外への渡航歴を合わせて申告してほしいとしている。 

蚊刺過敏症 

「デング熱が確認されたというニュースもないのに、蚊に刺されると必ず高熱が出るという人は、非常にまれですが“蚊刺過敏症”の可能性があります」

白井さんが当事者から聞いた話では、高熱のほかにも、以下のような症状があるとのこと。 

・刺された場所が異常に腫れあがって水ぶくれになる 
・喘息の発作が出る 
・じんましん 
・鼻水が出るなど 

「蚊刺過敏症の人は、蚊に刺されると喘息の発作が出ることもある」と白井さん(画像はイメージ)

蚊刺過敏症は「平たく言えば、免疫の異常による病気」だと白井さんは話す。 

「健康な人も90%かかっている『EBウイルス』というウイルスが、免疫細胞であるNK細胞に感染すると蚊刺過敏症と診断されます」 

受診の目安については、「蚊に刺されると毎回38℃程度の高熱が出るようならば内科か皮膚科の受診を」と勧める。 

「ただし、症例が少ないため、詳しい医療機関も少ないのが現状。治療するにはステロイドや抗がん剤の免疫化学療法などがありますが、完治するのは難しいと言われています。一番有効なのは蚊に刺されないようにすること。実際に蚊刺過敏症の方に話を聞いたところ、徹底的に対策をしているそうです」 

誰にでも経験がある蚊による虫刺されだが、思いもよらぬ症状に発展してしまうことがあるようだ。もし受診の目安に当てはまっていたら医療機関で医師に相談してみてほしい。 

■9~10月は蚊が活発化…いつの間にか家屋に入り込む蚊に注意
蚊は昼と夜で種類が違った!夜耳元で「ぷ~ん」とうるさい蚊は9月が要注意!対策を聞いた

■ダニ、蚊にゴキブリ…秋は虫の季節!?“害虫”対策の記事はこちら
刺されたら?駆除は?“害虫”対策

白井 良和(しらい・よしかず)
害虫防除技術研究所代表、有限会社モストップ取締役、医学博士。30年以上にわたり蚊を研究。1994年京都大学農学部農林生物学科卒業。1996年京都大学大学院農学研究科修了。殺虫剤メーカー研究員を経て、2001年富山医科薬科大学大学院医学系研究科博士後期課程修了。害虫駆除会社にて駆除業務を行った後、2003年、蚊駆除業務を柱に有限会社モストップを創業。現在では、蚊忌避剤や蚊捕獲器の効果確認試験を主な業務とし、書籍の出版、YouTube動画投稿等も行っている。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。