俳優の真田広之さんが主演、プロデューサーを務めたドラマ「SHOGUN 将軍」。
アメリカのエミー賞の18部門を受賞するという快挙を成し遂げました。

なぜ世界中で評価されたのか。
そこには真田さんの原点でもある「京都」とのつながりがありました。

日本時間の16日午前、ロサンゼルスで「エミー賞」の授賞式が行われ、ドラマ「SHOGUN」の主演、真田広之さんが主演男優賞に選ばれました。

エミー賞とは、アメリカ・テレビ界の「アカデミー賞」といわれ、全世界に影響力のある権威ある賞で、日本人の俳優として初めて、主演男優賞に選ばれるという快挙を成し遂げました。

【真田広之さん】「奇跡は起こる!より良い未来を共に創造していきましょう。ありがとう!!」

■史上最多18部門受賞の快挙 真田広之さんが「主演」と「プロデューサー」務める

ドラマ「SHOGUN 将軍」は、真田さん演じる徳川家康をモデルとした架空の武将が、日本に漂着してきたイギリス人航海士と関わることで、戦乱の窮地をくぐり抜け、天下統一を目指す物語。

ハリウッド映画の製作陣が手掛け、実力派の日本人俳優も多く出演。

真田さんは主演でありながら、プロデューサーとして作品に関わりました。

アメリカでの放送や配信が始まると、瞬く間に再生回数が900万回に達し、世界中で大ヒットとなります。

エミー賞の受賞前、アメリカ・ロサンゼルスで「SHOGUN 将軍」のファンに話を聞くと大きな反響がありました。

【男性】「とにかく、演技、すべてが素晴らしかったです。私は10点満点中10点です。
つまり、出演者全員が素晴らしかった」

【女性】「少なくともアメリカ人として観た私にとっては、日本の文化やニュアンスを非常に忠実に表現していると思いました。演技も素晴らしかったです」

そして迎えた、エミー賞の授賞式。
「SHOGUN 将軍」は、主演女優賞、監督賞に加え、最も優れた作品に贈られる作品賞を受賞しました。
18部門での受賞は、史上最多で、他の作品を圧倒しました。

■東映太秦映画村に真田さんの原点あり

10代のころから、時代劇に出演しキャリアを積んできた真田さん。

原点とも言えるのが、京都の東映太秦映画村にある東映の撮影所です。

同世代の俳優、稲田龍雄さん(64)は、「何事も挑戦」を貫いてきたことが、今につながっているのではと話します。

■「アクションを全部こなした。スタントマンより上手い俳優」と真田さんの昔を知る俳優

【俳優 稲田龍雄さん】「全部本人がやられたんです。伏見桃山城で20メートルくらいから飛び降りる、あとは、サーカスでまわったり」

「走ってる馬から、馬ごとひっくり返らしたりとか、できる限りのアクションを全部こなしていましたから。スタンマン泣かせです。スタントマンよりも上手い俳優でした」

「若いころから苦労して、陰で努力してはりましたから、こんだけ忙しいのに大学ちゃんと卒業して、撮影午後10時に終わってもトレーニングして、トレーニングしていなかったらこんな体になってない」


■ハリウッドで約20年挑戦 世界の頂に到達

真田さんは、2005年に『ラストサムライ』に出演したことを機に、本格的に活動の場をハリウッドに移し、およそ20年間の挑戦の末、世界最高峰にたどり着きました。

エミー賞で18冠という前代未聞の快挙について、ロサンゼルス在住のドラマ・映画プロデューサー木村元子さんは「世界が驚くレベルの出来事が今起こっているので、日本の作品じゃなくてもものすごい快挙なんです。これがアメリカの作品であったとしても、アメリカ人がびっくりする。こんな総なめにするなんてすごいと」

なぜ、「SHOGUN」がこれほどまでに世界の人に評価されたのでしょうか。


■「独特の日本の価値観が鮮明に出た作品」と専門家

【ロサンゼルス在住のドラマ・映画プロデューサー木村元子さん】「独特の日本の価値観が鮮明に出ていて、現代のアメリカ人が見ていて、すごくエキゾチックで異文化で、見ていていい意味でショックが大きかったのだと思います。いい意味でのショックですね」

「これだけドラマがあると、何か違ったものを見てみたいという思いが、すごく大きいと思うので、そこにものすごいヒットできたのではないかと思います」


■日本人スタッフもハリウッドへ 細部までこだわりぬいた日本流の演出

プロデューサーとして、日本人のスタッフや専門家をハリウッドに連れて行ったという真田さん。

撮影現場ではあらゆるディテール(詳細)が歴史的、文化的にふさわしくなるように立ち振る舞いから、周りとの接し方など細かい所作まで演出指導が行われました。

着付けや、衣裳アドバイザーとして「SHOGUN 将軍」の撮影現場に入った、東映・衣装部の古賀博隆さんに話を聞くことができました。

衣裳デザイン賞も受賞している「SHOGUN 将軍」。

細部へのこだわりは、現場でも感じられたということです。

■「家紋の位置」「わらじの履き方」も徹底

【SHOGUN 将軍 着物スペシャリスト東映・衣裳部 古賀博隆さん】「真田くんの顔に泥ぬったらあかんし、せっかく呼んでくれたんで。毎回新しい衣裳ができたらフィッティングをする」

「家紋あるじゃないですか、カルロスって衣装デザイナーが『家紋はこの位置でいいか?』って…家紋の位置をちゃんとしないとおかしくなる。(雑兵の被り物)みんな首でとめている。本当は顎にしないといけない。10人いて9人くらいが首にしていた。『違う』と!相手は『みんな“首”じゃないか!』って言うのを、顎に引っ掛けるように直した」

「真田くんは、クランクインの前、わらじの練習もしたみたいよ。わらじの履き方。みんな並べて。外国の人は1人ではできない」

時代劇を知る日本人スタッフとして衣裳だけでない部分でも、意見していきました。


■「サウスポーはいない時代 槍は右手で」これからの時代劇が「SHOGUN」が基本となるように スタッフがこだわり抜いたディティール

【SHOGUN 将軍 着物スペシャリスト東映・衣裳部 古賀博隆さん】「兵隊が並んでいて、槍を持って。なんか違和感あるなと。右手で持ったり、左手で持ったりするんですよ。その時代はサウスポーはないからね。全部、右。右手で持たせたり、細かいことですけどね」

「それとかお城あるじゃないですか。そこに農民を入れようとするんですよ、向こうの演出家が。『ノーノー入れたらあかんと、侍だけ』と、向こうの言い分は『人件費かかっているんで、賑やかしに入れた』と。『簡単には入れる場所じゃないんで、(城に農民は)入れんといてくれ』と伝えた」

「間違ったことを映像に残すと、それが基本になってしまうと困るんですよね。外国の人も「SHOGUN 将軍」を見て、これから時代劇を作る場合は、それを基本にしてほしい」


■「日本発でも世界に通用する。布石になればという気持ち」

エミー賞を総なめにするという快挙を成し遂げた「SHOGUN 将軍」チーム。
授賞式で真田さんはこうスピーチしました。

【真田広之さん】「これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々、そして監督や、諸先生方に心より御礼申し上げます。あなた方から受け継いだ情熱と夢は海を渡り、国境を越えました」
「Thank you so much!!」

受賞後には、次世代に向けた思いも語りました。

【真田広之さん】「このことが次世代の俳優や制作陣に大きな意味をもたらしてくれると信じています。時代劇が継承され、そして日本発でも世界に通用するものを作っていくという、一つの布石になればという気持ちです」

■セリフはほぼ日本語 英語字幕が受け入れられる時代に 背景にコロナ禍

「SHOGUN 将軍」はセリフのほとんどが日本語で展開され、字幕が挿入されました。
映画プロデューサー木村元子さんは「そもそもキャストの大半が日本語で演じていて、そこがすごい。言葉が違うから観られないという時代は終わり、コンテンツに魅力があれば、英語でなくてもアメリカで観てもらえる時代になった」と話しています。

関西テレビの加藤さゆり報道デスクは、字幕映画が受け入れられた要因に「コロナ禍」があると話します。

【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「これまで多く観られた作品というのは、やはり英語の作品が多かったと思います。しかし、コロナ禍が転機だと言われていて、世界中で巣ごもり需要がある中で、配信ドラマや映画の需要が伸びました」

「アメリカの中でもそういった海外の作品に触れる機会が増えたんです。そういう中で韓国映画が作品賞を受賞するなど、どんどん字幕を見るということに慣れてきた。そこに来てこの『SHOGUN 将軍』ですから、すごくいいタイミングでアメリカの人たちも受け入れたというところがあるかもしれません」


■日本語が持つ「空気」「間合い」も魅力

共同通信社の太田昌克 編集委員は、日本語の持つ魅力が世界に伝わったのではないかと語りました。

【共同通信社 太田昌克 編集委員】
「エンターテイメントの金字塔ですよね。真実が細部に宿るという、とことんこだわっている。セリフが日本語で、日本語はやはり『間合い』があって、空気の『気』が伝わるということが、観ているだけでも、魂とか『気』とか、そうしたものがやはり、日本の文化だったり、精神世界を表彰していると思うので、それが相当程度海外でも伝わったのではないかと思います」

(関西テレビ「newsランナー」2024年9月16日放送)

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