移住した一家4人を象徴するシラカバの木を設置した店内で「自然の中で道産ワインと料理を心ゆくまで味わってほしい」と語る佐野健さん、菜穂さん夫妻=北海道東川町で2024年4月22日、横田信行撮影

 北海道のワインに魅了された東京・広尾の料理店「ぺりかん」のオーナーシェフ、佐野健さん(50)が一家で東川町へ移住し、ワインオーベルジュ「東川ペリカン」をグランドオープンさせた。佐野さんは「気軽に道産ワインを楽しみながら道北を旅行する拠点にしてほしい」と話している。【横田信行】

 佐野さんは東京都出身。フランス料理や和食の腕を磨いて、2012年に妻の菜穂さん(41)と「ぺりかん」を開業した。フランス料理をベースにした旬の食材を使ったメニューが人気を集め、「フォアグラご飯」は「全国丼グランプリ」で金賞にも輝いている。

道産ワインを堪能できるオーベルジュ「東川ペリカン」とワインショップ「コペリ」。建物裏でブドウ畑の準備が進む=北海道東川町で2024年4月24日、横田信行撮影

 ワイン好きの佐野さんがとりこになったのが道産ワイン。道内各地の生産者と交流したり、ブドウの収穫も手伝ったりするほどの愛好家だ。コロナ禍で、郊外の自宅から店まで1時間以上かけて夫婦でバイク通勤を続ける東京での生活に限界を感じ、家族との時間を大切にしたいと北海道への移住を決意。自然の中で道産ワインを気兼ねなく楽しんでもらえる店を出したいという思いもあった。

 移住先に選んだのが東川町。有名ワイナリーが多い後志や空知地方のような成熟した生産地でないが、14年に地元産ブドウによるワイン「キトウシ」の販売を始めており、生産地としての将来性に着目した。町が移住者受け入れに熱心で、旭川空港が近く、「ぺりかん」の閉店を惜しむ常連客らが東京から訪れやすいという利便性も考慮した。

 23年5月に一家4人で移住。資金調達や人手不足による施設完成の遅れなどもあったが、今年1月のプレオープンを経て、4月19日にグランドオープンした。佐野さんは「いろいろな人とのつながりに恵まれた。町でブドウ畑の手伝いをするなど準備がしっかりとできた」と移住からの1年間を振り返る。

 大雪山系を望む田園地帯に建てた施設は、レストラン14席、客室2部屋。レストランに「家族4人一緒に頑張っていこう」と間伐した4本のシラカバの木を飾り付け、こぢんまりとしながらも、道産材を使った食器など随所にこだわりをちりばめた。

 敷地内に道産ワインを中心に販売する小さな店舗「コペリ」も併設した。周囲にブドウも植樹。収穫は数年後になるが、「目の前の畑から収穫したブドウから作ったワインを店で出してみたい」と構想を語る。フォアグラご飯など工夫を凝らしたメニューを提供する東京時代のスタイルを踏襲しながら、日替わりで30~50種類の道産ワインを用意する。

 「観光旅行の中で心ゆくまでワインを楽しみ、上川地方の素敵な所を回ってもらう拠点にしてほしい。地元の方にも気軽に利用してもらい、交流できる場所になれば。将来的に移住希望者の力になれる場所にしたい」と佐野さん。夢は膨らむばかりだ。

 ランチ(3000~5000円)、ディナー(7000円~1万円)。問い合わせや予約は、インスタグラム(@higashikawa_perican)。

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