8月に秋田市で行われた全国民謡コンクールの一般の部で、秋田市の女子高校生が優勝を果たした。民謡にかける熱い思いと素顔に迫った。
8月に秋田市で行われた民謡コンクール。「一般の部」には、秋田県の内外から43人が出場し、自慢の唄声を披露した。ベテラン勢の出場が多い中で、ひときわ大きな声で唄い優勝したのは、秋田市の川井ふたばさん(16)。
川井さんに優勝した心境を聞くと、「喜びと驚きもそうだし、頑張ってきてよかったという感情があった。ただ声を張るだけじゃなく、曲の最初の見せどころに強弱をつけて唄うことを意識した」と笑顔で語った。
潟上市の秋田西高校。昼休みに友人たちと昼食を楽しむ川井さん。一緒にいる女子生徒は幼稚園からの幼なじみだ。小さい頃の川井さんについて尋ねる男子生徒に対し、幼なじみは「モテまくり。クラスの男子みんなに追いかけられていた。幼稚園が一番モテていた」と当時を振り返った。
小さい頃から人気者だった川井さんを夢中にさせたもの。それが「民謡」だった。歌うことが大好きな川井さん。民謡との出会いは園児の時だった。
川井ふたばさん:
「幼稚園の時に初めて民謡を聞いたが、太鼓やおはやしも『自由に遊びながらやっていいよ』と言われて、遊び感覚で楽しめることに引かれた」
その後、弟の健太朗さんと民謡に浸り、一緒に種苗交換会で唄声を披露するなど数々の大会に出場するようになった川井さん。小学5年生の時には、民謡の全国大会で小学生グランプリを獲得したほか、高校生になると津軽五大民謡全国大会の津軽じょんから節部門で連覇を達成。めきめきと実力をつけ、頭角を現していった。
川井さんは、民謡と出会うきっかけをつくってくれた秋田市の民謡歌手・藤原美幸さんの教室に通い、唄声を磨いている。この日は、秋田おはら節の全国大会に向けて最後の仕上げをしていた。
藤原美幸さんに川井さんの課題を聞くと、「声はきれいで馬力もあり、声に言うことはないが、そこに味わいをつけてほしいと伝えている。みんなに愛される民謡歌手になってほしい」と語った。
県内には10を超える民謡の全国大会があったが、新型コロナウイルスなどの影響で、秋田草刈唄や秋田馬子唄などの大会が次々と休止や廃止に追い込まれた。
川井さんは、特に若い世代に民謡の魅力を伝えようと、流派を超えた中高生グループ「BA5E(ベイス)」のメンバーとして新たな活動も始めた。
川井ふたばさん:
「ここ2~3年でなくなってしまった民謡大会もあるので、それは悲しいと思う。BA5Eは、Jポップも歌えるけど“民謡も唄える”というギャップを知ってもらえたら、若者世代にも届くと思う」
将来は、民謡全国大会の最高賞となる「内閣総理大臣賞をとりたい」と話す川井さん。同じ志を持つ仲間とともに、民謡の世界に新たな風を吹き込む。
川井ふたばさん:
「自分自身が楽しみながら唄うことが、お客さんに民謡が楽しいことが一番伝わることだと思うので、歌詞の情景を思い浮かべながら、しっかりお客さんに民謡の内容や良さを知ってもらえるように意識して唄っていきたい」
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