(左)自給するお米を庭で天日に (右)お見事だった中秋の名月

 9月半ば、巷(ちまた)は真夏日と聞くが、ここでは日差し強くも乾いた風が金色の稲穂を揺らし、汗ばむ体に涼と秋を届ける。ふと稲刈りでかがんだ腰膝を伸ばして見上げる。天へ抜ける青空へ白い雲が所々もくもく、里山の緑が揺れる。水色トンボが穂に止まっては離れ、稲間を漂い、また止まって、私と戯れる。働くって本来これだ、なんと気持ちいい!  運営する「SOSA PROJECT」で東京都心から通いで米作りを始めた女性が「収穫前なのに、街で米が買えなくても焦らず、安心なのが不思議」と。インバウンド? 地震予報で買い占め? そんな量は数字を見てもたかが知れている。昨年の米の不作もうそ、平年並みだった。しかしだ。総生産量の減り方は毎年加速、この6年で約10%減、同期間の人口2%減をはるかに凌(しの)ぐ。それを論じるメディアは皆無。減反政策の批判はわかるが、もっと作って輸出で稼げ、なる論も。  驚くなかれ農家が働いて年間に残る所得は2020年、平均18万円で労働対価は時給180円、21と22年は所得1万円で時給10円なるデータも。10円ですよ! よって農家はこの20年で半減、直近9年では64万人も減って111万人、うち65歳以上が約7割、49歳以下1割強だけ。わかる? 今更もっと作って輸出? 面積拡大で効率化? 国土の7割が山あいで起伏に富んだ狭い農地なのに! 取り返しつかない農政と無知無関心な米の消費者に、私はとっくに辟易(へきえき)してる。  年配農家が言う。「国民のために年金で赤字補塡(ほてん)して頑張ってきたが限界、どうしようもない、もう知ったことではない」。農家は国土も維持してきた。「広い集落の草刈りを若者(といっても50代)が1人で担うが、今後は…」。悲しいかな、味が劣り健康に芳しくない輸入米や加工食品に頼る人が増えゆく数年先。それも国際情勢で右往左往、回避しようと軍拡ですか? できることはある。希望も捨てない。それは徐々に増えつつある、自ら繫(つな)がる、関わる、作る、移り住む、という Re Lifeローカルへの流れ。既に行動してる人は、収穫を祝う見事な中秋の名月を堪能したことだろう。 <(高坂勝(こうさかまさる) 脱「経済成長」、環境、幸せの融合をローカルから実践。54歳)>


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