衆議院の解散・総選挙が考えられる最速の日程で行われる見通しとなりました。自民党の石破新総裁は、総理大臣指名を前にした30日、衆議院選挙を来月27日に行う考えを表明しました。
■石破氏「早期に国民の審判を」
新しい総裁の誕生で風雲急を告げる永田町。解散表明は、菅新副総裁や森山幹事長、小野寺政調会長、鈴木総務会長ら、新たな党4役を従えた会見の冒頭で飛び出しました。
自民党 石破茂総裁
「10月1日、国会の首班指名で内閣総理大臣に選出されれば、直ちに組閣を行い、政権を発足させたい。新政権はできる限り早期に国民の審判を受けることが重要であると考えており、条件が整えば10月27日に解散・総選挙を行いたい。全国の選挙管理委員会などの選挙準備の観点から、本日表明をさせていただくものであります」
総理就任前の解散表明という異例の展開です。
自民党 石破茂総裁
「(Q.解散権を持つ総理に就任する前だが適切との考えか)今、内閣総理大臣でない者がこのようなことを行いますのは、それはかなり異例なことであると承知いたしております。『(総理に選出)されれば』ということを申し上げました。これが不適切なものだと考えているわけではございません」
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■慎重論が一転 石破氏の“変節”■慎重論が一転 石破氏の“変節”
今年中の解散は予見されてはいましたが、石破氏は総裁選の間「解散までには一定の期間が必要だ」と言ってきました。
自民党 石破茂氏(先月24日)
「全閣僚出席型の予算委員会を一通りやって、この政権は何を考えているのか示せたその段階で、可能な限り早く信を問いたい」
報道ステーションに総裁候補として出演した時も…。
自民党 石破茂氏(12日)
「主権者である国民が判断できる材料をきちんと示すのは、それは新政権の責任です。材料もないのに判断してくれという話にはならないんだよ」
ただ、30日は…。
自民党 石破茂総裁
「(Q.予算委などを開催する考えは)衆議院・参議院におきます所信表明、それに伴います、当然のことですが質疑はきちんと行う。その他、予算委員会、あるいは党首討論。これは国会の判断があるので、それに従いたい。いずれにしても国民の皆様方に判断いただける材料をきちんと整えるような努力は続けて参りたい」
しかし、時間はそんなにありません。自民党は来月1日に召集される臨時国会の会期を9日までとする方針を野党側に伝達。この日に解散となれば、総理就任から9日目と戦後最速になります。総選挙は来月15日公示、27日投開票で行われる予定です。
党内からは…。
自民党 柴山昌彦衆院議員
「かなり驚きました。総裁選の間は、しっかりとあるべき政策等について国会での議論が必要だと言っていた。私はてっきり早期解散はないんだと思っていた」
自民党 青山繁晴参院議員
「能登、僕も入ったが復旧自体ができていない。10月末まで政治空白になるというのは、本来の国政のあり方とは違うと考えている。(Q.臨時国会9日間で審議は足りるか)いや足りないです。足りるはずがないじゃないですか」
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■過去に石破氏「卑怯(ひきょう)」と批判も■過去に石破氏「卑怯(ひきょう)」と批判も
野党も反発を強めています。
立憲民主党 野田佳彦代表
「もろに7条解散だな。ご本人が否定していた解散でしょ」
『7条解散』とは、不信任案の可決などに伴わず、内閣の助言と承認によって、天皇の国事行為として行う解散です。石破氏は、この7条解散について、憲法の趣旨に反するとして否定的でした。
自民党 石破茂氏(2020年7月)
「今なら勝てると思うから解散する。それは卑怯ですよ」
立憲民主党 野田佳彦代表
「これまでの歴代見ても、ご祝儀相場があるうちにとか、大義もないのに野党の準備が整っていない時とか、恣意的にやってきたと思う。その動きに石破さんは今まで警鐘を鳴らしてきたと思う。ご自身がやるとはまさか思っていなかった」
国民民主党 玉木雄一郎代表
「自民党を変えてくれるという期待のなかで石破新総裁が選ばれたんだと思うが、自民党を変える前に自分自身が変わってしまっている」
共産党 田村智子委員長
「党利党略、裏金隠し、疑惑隠し、逃げ切りを狙うというやり方は非常に問題が大きい。そんなにわが党との論戦が怖いのか」
れいわ新選組は「自民党とは詐欺師であり、統一教会であり、裏金泥棒であり、サタンだ」、社民党は「『裏金隠し解散』にほかならず、とても政治への信頼回復にはならない」、参政党は「石破氏が女系天皇、移民拡大、同性婚、緊縮財政に肯定的な立場を示していることに懸念を抱いています」などと、それぞれコメントしています。
■“裏金議員”公認は「厳正審査」
野党は、解散前に予算委員会を開いて、能登半島の復旧・復興に向けた補正予算の編成や、“裏金議員”の国会での説明などをするよう求めることで一致しました。
並行して、候補一本化の調整も急ぎます。与野党一騎打ちの構図に持ち込もうという動きです。
日本維新の会 吉村洋文共同代表
「自民過半数割れを目指していく。今回は元々、政治とカネで裏金問題でこうなっているわけだから。一本化で勝負をかけるのは僕は筋が通っていると思う」
対する自民党。“裏金議員”を公認候補とするかどうかについて、小泉選対委員長は…。
自民党 小泉進次郎選対委員長
「都道府県連に対して、不記載も含めて厳正な審査のうえ、改めて機関決定をしていただき、公認申請をしてもらうように今依頼をかけているところ」
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■『石破ショック』株価大幅下落■『石破ショック』株価大幅下落
日経平均株価は、石破新総裁の誕生による円高の進行に加え、金融所得課税の強化などへの警戒感もあって、取引開始直後から急落。30日の取引は先週末から1910円下げて終わるなど、投資家心理の冷え込みが表れていて、市場関係者からは「石破ショックだ」という声も聞かれます。
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■石破新体制 船出に“不安”?■石破新体制 船出に“不安”?
藤川みな代政治部長に聞いていきます。
(Q.総裁選を争った高市さん、小林さんにも起用を打診したが断られたと言われています。党内基盤は大丈夫ですか)
藤川みな代政治部長
「最後あれだけ接戦になった高市さんから打診を断られたということで、党内基盤には引き続き不安が残ったままです。もともと高市さんは、石破さんとは路線が違うので打診は受けないだろうとみられていました。この先、石破さんにとって、衆院選、臨時国会、年が明けて通常国会、参院選と真価を問われる状況が続きます。そうしたなかで、高市さんは石破政権と距離を置いて、早くも次のチャンスに備えているということです。周辺によれば『高市さんは完全に戦闘モードに入っている』ということです。実際、自民党内には『石破さんには支持率が高いうちに選挙をやってもらって、もしうまく行かなければ、参院選の前にまた顔を変えればいい』という話も出ています」
総理就任前に解散・総選挙の時期を明言するという異例の対応を取った石破氏。その理由については「全国の選挙管理委員会などの選挙準備の観点から表明した」としています。ただ、ここからの日程はかなり過密です。
10月1日に臨時国会で指名された後に組閣し、副大臣や政務官といった人事が続きます。そして、4日には所信表明演説。週があけた7日から各党の代表質問や党首討論を行う見通しです。その後、9日にも衆議院を解散。その日のうちにASEAN首脳会議のため、ラオスへ向かう日程が想定されています。
(Q.石破さんは『解散は予算委員会をやって議論してから』『すぐ解散しますという言い方はしない』と発言してきました。総裁になった途端に考えを変えた理由はどこにありますか)
藤川みな代政治部長
「自民党内では、森山さんが幹事長を引き受ける条件として、最も早いスケジュールでの解散を進言したとみられています」
(Q.森山さんの進言を受け入れたのはなぜですか)
藤川みな代政治部長
「進言を受け入れざるを得なかった背景には、石破さんの党内基盤の弱さがあるとみています。決選投票で石破さんを支持に回った小泉さん・森山さん・菅さんは早期解散論者ですし、“旧岸田派”にとっても、早期に解散しなければ岸田さんが身を引いた意味がなくなってしまうので、支援に回ってくれた人たちのいうことを聞かざるを得ない状況です。また、石破さんにとっても、内閣に内定したメンバーは初入閣が13人もいて答弁能力は未知数です。石破さんが当初言っていた予算委員会を行うことはリスクが高いです。党首討論であれば、各党代表との一騎打ちも乗り越えられると考えているとみられます」
(Q.裏金問題に関わった議員の公認をどうするか、急いでに決めないといけません。しっかりできるのでしょうか)
藤川みな代政治部長
「短期間で極めて難しい判断を迫られることになります。裏金問題に関わった議員が多い安倍派では、これまでの処分や人事をめぐる不満がたまったままです。そういった安倍派の議員に対して、党内では『反省が足りない』という冷ややかな見方も続いています。世論は一貫して裏金問題に厳しい対応を求めているので、公認をめぐる判断を誤ると、選挙の後まで裏金問題を引きずり続けることになりかねません」
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