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少子化が課題となる中、「次にもう一人、出産や子育てをしようという意思決定につながる支援はなんですか?」と県が子育て世代にたずねたところ、「経済的負担の軽減」が一番多くおよそ40%をしめ、次いで、「共働きで子育てしやすい職場環境整備」「身体的負担軽減」「心理的負担軽減」が続きます。

こうした子育て世代の希望をかなえようと独自政策を打ち出している広島県府中市に注目しました。

<VTR>
府中市で4人の子を育てる石風呂さん。
朝、0歳の子とやってきたのは保育園です。

「おはようございます」
「ちょっと先生、涙涙で」

今年4月から末っ子の謙芯(けんしん)くんを保育園に入れ働き始めました。
石風呂さんは、3人目の來桃(くるみ)ちゃんが医療的ケア児だったことをきっかけに資格を取得。週に2回ヘルパーの仕事を始めたのです。
きっかけは、今年4月から府中市が、0歳から2歳の保育料を無償にしたことでした。

【石風呂佳奈さん】
「何にしても物価があがってきている中、全部パート代が保育料に飛んでしまうということで、家庭で保育していたんですけど、無償になるというのは本当にありがたい話で、社会復帰するという大きな一歩にはなりました」

国はすでに3歳以上の保育料の無償化を実施していますが、0~2歳児は手つかずのままです。
県内で自治体独自に保育料を無償化しているのは、現在のところ、府中市と世羅町神石高原町のみです。

【府中市健康福祉部・山田資子 こども政策担当部長】
「府中市内、働くところもたくさんありますし、共働き家庭が多いので、特に低年齢のところは保育料が高いなぁという声もございますので、そこへの支援ということで経済的支援をさせていただいております」

県の調査でも少子化対策に効果的だと思う公費負担について子育て世代が求めたのは、「大学に必要な費用」に続き「保育料」が2番目に多くあがりました。

府中市によると、無償化を始めた今年4月以降、市内の0~2歳児の72%が保育所に通っていて増加の傾向です。
併せて、独自に、保育園の給食費の無償化も導入しました。(主食の白ご飯を除く)
なぜ、ここまで独自に子育て支援に力を注いでいるのでしょうか?

人口およそ3万5千人の府中市。
この10年でおよそ6300人減るなど人口の減少は加速しています。
そこで対策として去年から子供の医療費補助を18歳まで広げるなど子育て支援に力を入れ、若い世代の移住を呼びかけて「安心して子育てできる街」へ舵を切りました。

<府中市子育てパッケージ>
駅近くの市中心部、人が集まる場所に3年前に設けたのは、子育て世代が集まれる場所です。
ここに、遊び場とともに「子育てステーション」を作りました。
この施設では、通常役所で行う母子手帳の交付を行っていて、妊娠期から子育て期まで過ごせるよう工夫されています。

取材をしたこの日も、乳幼児向けのイベントが行われていました。
母親のそばには、保育士資格を持った職員が寄り添います。

【石井記者】
「こちらの施設は遊べるだけではありません。健診室も設けられていて、この場所で健診も受けることができます」

4ヵ月以降の成長ごとの医師による集団健診も同じ施設で行えます。
保育士や保健師などの専門家も常駐していて、いつでも相談ができる場所にしました。
さらに…

<プレゼント大作戦>
【府中市健康福祉部・山田資子こども政策担当部長】
「こちらは4カ月健診になります。絵本のプレゼント「ブックスタート」ということでお父さん・お母さんと一緒に読んでほしいなという気持ちを込めて2冊の本をプレゼントしております。府中市木工の町でございます。生まれてきてくれてありがとうという気持ちを込めて「ありがとうつみき」というのを作っております。
オリジナルでございます。こちらは10カ月健診のときにみなさんにプレゼントしております。三歳児健診の時に6冊の絵本の中から2冊を選んでいただく、こちらのセカンドブックというのもはじめております」

妊娠8ヵ月には、おむつケーキなどおむつのプレゼントを。
出産後は、おむつを捨てるごみ袋まで用意していました。
妊娠期から3歳まで、節目ごとに訪れてもらい子育ての孤立を防ごうと企画されました。

【府中市で子育てするお母さん】
「よく来てます。ほかの地域からひっこしてきたので、知り合いもいない状態でここに住んでいるから、こういった場があってよかったなってすごく助けられています」
Q:やっぱり子育てしやすい街なんでしょうか?
「しやすいと思います」

【府中市で子育てするお母さん】
「ほぼ毎月に1週間以上は来させてもらっている。ものすごく助かっています」
Q:支援が充実しているともう1人産んじゃおうかなという気持ちになりますか?「前向きな気持ちにはなれるかなと思います」

一方で、課題も。
子育て支援にかかる予算は、今年度およそ260憶の一般会計の中の21億。
8%を占めています。
多くは、国や県の補助金を利用し、足りない部分は過疎対策事業債など国からの借入もあり、いわば、将来子育て世代が増えるための投資をしている状態です。

【府中市健康福祉部・山田資子こども 政策担当部長】
「『子育てするなら府中市』をスローガンに。府中で子育てできてよかったなというところを皆さんに実感していただいて、これから大きくなって、また府中市に帰ってきていただけるような、府中市に愛着を持っていただけることをずっと続けていきたいなということで子育て支援をしております」

子育て支援で過疎化を食い止める。
結果の求められる挑戦は始まったばかりです。

<スタジオ>
【元カープ・安部友裕さん】
「子どもを産むことに不安を覚える人がいると思うが、居場所をしっかり市が作っていくことで、子育ての不安や負担を軽減してあげられているということは、ここに住みたくなる、ここに住み続けられる、府中市が今後もっともっと盛り上がっていくケースになると思う。すごく楽しみです」

経済的な不安だけでなくて、心理的な負担を下げる、孤立させないということも大事ですね。

【JICA中国・新川美佐絵さん】
「お母さんの孤立を防ぐというところ。プレゼントというのも奇をてらったものではなくて、非常に現実的で当事者のニーズを汲んでいると思う。本来なら国がやらなくてはならないことだと思うが、それを市として取り組んでいる府中市は、本当に素晴らしいと思う」

地域ごとに独自性を打ち出して、住みやすい街、子育てしやすい街をつくって、その町の活気が盛り上がっていけばいいと思います。

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