「今夏の暑さで、果実は甘く、しっとり酸味も含んで近年にないできばえ」と話す大和田宏・玉川村さるなし生産組合組合長=福島県玉川村南須釜で2024年9月27日、根本太一撮影
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 福島県玉川村の果樹園で、緑色の小ぶりな果実がたわわになっている。1粒の大きさは3センチほど。その名は「サルナシ」。マタタビ科の植物で、キウイフルーツの原種とされ、「あまりに美味で、猿が食べてなくなってしまう」などの諸説から、この名で親しまれている。「コクワ」とも呼ぶ。

 サルナシが含んでいるビタミンCは、レモンを大幅に上回る。また、体内の老廃物排出を促す酵素や整腸作用のある物質も豊富に含んでいる。

 村さるなし生産組合組合長の大和田宏さん(68)によると、玉川で栽培が始まったのは、1989年。葉タバコ農家が代替作物として転用した。その後に「村の特産品に」との後押しもあり、今秋は6農家が計約2ヘクタールで栽培しており、規模はさらに拡大中だ。

1粒の大きさが3センチほどに実ったサルナシ=福島県玉川村役場提供
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 とはいえ、収穫期は9~10月に限られるうえ、皮が薄いため輸送段階で傷んでしまうのが、県内でさえも知名度が低い理由の一つ。村は果実酒など6次産業化(生産、加工、販売まで手掛けること)を進めてPRに努める。

 生産者らは「生食の味を知って」と願う。実際に口に含むと、とろけるような甘さの後で爽やかな酸味が舌先を包むのだ。ただし、大和田さんは、1日に食べる目安は2~3粒にとどめるよう注意を促す。整腸作用が強く、それを超えると脳からの信号で口の周りが荒れるという。

 収穫量は、新型コロナウイルスや、新芽が出始めた昨年春先の霜害などの影響で、しばらく落ち込んでいた。今季の見通しについて、大和田さんは「夏の暑さもあり、過去最高の約10万トンに達して数年ぶりに『日本一』を奪回できる」と満面の笑みを浮かべる。

輪切りにした断面がキウイのようなサルナシ=福島県玉川村観光物産協会提供
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 5日には、たまかわ文化体育館で、全国の自治体・生産組合など計15団体が集う「全国さるなし・こくわサミット」が開催される予定だ。2017年の村での第1回開催を機に、コロナ禍を挟んで今年で6回目。サルナシが含む栄養素などについて、がんや認知症の予防などの視点から、医学の専門家が基調講演を行う。参加無料。サミットの問い合わせは、村産業振興課(0247・57・4627)。

 10月いっぱいの週末に限り摘み取り体験(中学生以上1000円)もある。申し込みや購入場所などについては、村観光物産協会(0247・57・7230)へ。【根本太一】

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