もし災害が起きたら、ペットはどうしたらいいのか。1月の能登半島地震では、ペットをめぐる問題が頻発した。同伴できる避難所があれば、できない所もある。飼い主が亡くなった犬や猫もいる。被災地でペットの保護を進める公益財団法人「日本アニマルトラスト」(大阪府能勢町)で代表を務める甲斐尚子さんの思いは――。
――今回の地震でもペットは被災しました。
◆飼い主からペットを無償、無期限で預かるため、財団のスタッフが地震から1カ月後の2月1日、保護活動に向かいました。飼い続けられるのか不安を抱えている人からペットを預かることで、生活再建の助けになれたらという思いです。
ただ、2011年の東日本大震災や16年の熊本地震の時と同じく、現場の人繰りは大変です。今回も本当はもっと早く被災地に行ければと思っていましたが、能登の道路状況や石川県の愛護団体との調整に時間がかかりました。現地に入ってからは、被害の大きかった輪島市や珠洲(すず)市、能登町に向かいました。今回預かったのは猫30匹余り。偶然犬がおらずいずれも能勢町の財団の施設まで運び、保護しています。
――実際に困っていた被災者はどんな状況でしたか。
◆半壊状態の家で猫を飼っている70代の1人暮らしの女性がいました。避難生活を続けながら、日中は家に戻り、猫の世話をしているようでした。
しかし、家は崩れかけているため、いつまで世話を続けられるか分からない状況です。別の避難者を通じて、女性に話を聞くと「どうしたらいいか分からない」と途方に暮れていました。女性には無償で預かれることを伝え、捕獲器で猫を保護し、現在はうちの施設にいます。
――避難所でペットと暮らす課題は何でしょうか。
◆環境省の「人とペットの災害対策」で示されているのに、避難所によって対応の差があることです。ペットと一緒に入れる所もあれば、避難所とは別のスペースで飼育が可能な所もある。ペットを受け入れない所もある。近くに避難所があっても「ペットと入れないから」と車中泊をする人もいました。
避難所を一つ一つ回ったスタッフから、ペットを飼っている被災者が困っているのは、ペットたちの餌やトイレシートが不足すること、と聞きました。こちらからニーズを聞き取る必要があります。
――被災地では、仮設住宅の建設がされていて、一部では完成しています。
◆入居できるようになっても、ペットの飼育が禁止されている場合があり、大きな課題です。そういった情報が被災者に伝わっていないこともありました。
――普段からの備えはありますか。
◆何かあった時に頼れる人を見つけておくことですね。身内が引き取れればいいですが、関係が希薄になっていると引き取り手がいないことがあります。
不妊去勢手術をしていないと被災地で繁殖して増えすぎてしまうので、手術を済ませておくことも重要です。ペットではありませんが、野良猫であれば、手術をして地域に戻す「TNR活動」が有効だと思います。この場合、地域で餌やりなどのルール作りをする必要があるので、日常的に地域で話し合いをしておいた方がいいでしょう。【聞き手・川地隆史】
かい・しょうこ
静岡県出身。1990年、大阪府能勢町に個人でペットの保護施設を整備。阪神大震災で被災したペット450匹を保護したほか、東日本大震災や熊本地震でも活動をした。
人とペットの災害対策
環境省が18年に定め、ガイドラインをウェブサイトで公表している。被災者にはペットを連れて避難する「同行避難」を勧めている。避難所でのペットの受け入れについては、自治体が地域防災計画でペットの位置づけを明確にすることなどを求めている。
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