22日に閣議決定が予定されている政府の経済対策について、自民・公明の与党側は、国民民主党が求める「103万円の壁」の引き上げを明記することで3党合意に至った。国民民主党の玉木雄一郎代表は、「30年動かなかった壁を動かしました」とX(旧Twitter)に投稿。一方で、先の衆院選以降、財務省の公式Xアカウントには、財務省に対する非難の投稿が急増している。
【映像】103万円の壁→178万円になったらこうなる
これは、国民民主党が提案している「103万円の壁」見直し案について、「国と地方を合わせて7〜8兆円の減収につながる」と、否定的とも受け取れる試算を財務省が発表したことが発端だ。この試算が「税収減だけを指摘して、手取りが増えず困っている国民生活のことを考えていない」といった批判を招き、反発の声が強まる結果を招いている。
財務省は法律(財務省設置法)により「健全な財政の確保」が役割とされている。しかし、注目が集まる「103万円の壁」見直し案に対する対応をめぐり、その姿勢に疑問や反発が相次いでいる。『ABEMA Prime』では、元大蔵官僚をゲストに招き、「財務省は本当に悪者なのか?」をテーマに議論した。
■ついに動き始める“103万円の壁”
国民民主党は11月22日に政府が閣議決定を目指す、自公が示した「総合経済対策」修正案に合意した。いわゆる“103万円の壁”については、2025年度税制改正の中で議論し、引き上げが実現される見通しとなった。国民の浜口政調会長は「30年間変わらなかった103万円が動くことになるという風に考えている」とコメントした。
旧大蔵省に30年以上勤め、現在は財務省のシンクタンクで特別研究員を務める森信茂樹氏は、「財源は結局“増税”になる」と断言する。医療・介護の負担見直しや、高所得者の社会保険料引き上げなどは、損する人がいるため容易でなく、「歳出改革は困難」と考えている。また、無駄な事業はすでに削減されて「公共事業の削減は困難」であり、金融所得課税の強化で余裕のある人の負担増などの「増税」でまかなうことになるとの見立てだ。
ネット掲示板「2ちゃんねる」創設者のひろゆき氏は、「30年前くらいから、低所得者を何とかした方が良いという議論はあったと思うが、財源やシステムの話ばかりを重ねて、(手取りを増やす政策を)後回しにしてきただけだった」と振り返り、「だからこそ、とりあえず『やっちゃいましょう』としないと、また来年にしよう、再来年にしようと、議論が先送りされ続ける」と予想する。
また、少子化問題と重ねて、「議論だけで成果が出ないよりは、完璧ではないかもしれないが、失敗があっても、現時点でできる限りの政策を行うことが大事だと思う」と話す。さらに「労働者は減税で報われて、資産家は課税強化で損をする状態に持っていく必要がある」と意見を述べた。
時事YouTuberのたかまつななは、“103万円の壁”について、国民案である基礎控除178万円への引き上げについて、対象者の所得制限も選択肢として示す。「低所得者のみなど、線引きをすることで"税収減”にならないなら、その方がいい。減収して行政がサービスを削るとなった時、低所得者が困ってはいけない。賢い税の使途があるのではないか」。
森信氏は「基礎控除は所得2000万円から下がってゼロになる。これが1600万円から下がるよう拡大するならわかるが、一番得するのが高所得者なら意味がない。いいところ取りではなく、パッケージで議論すべきだ」との考えを述べる。
■財務省は悪者でいい?元官僚「うまく使えばいい。ただ陰謀論とかは違う」
森信氏は、入省時から「財務省(旧大蔵省)は悪者で構わない」と教えられてきたという。政治家は陳情すべてに応えられず、断る時には「財務省がダメ」と逃げ道として使うため、政治家の防波堤になるとの考え方だ。また、総務省や地方自治体も事業を守るため、財務省を悪者にすることがあるが、それも国民の生活を守るためであれば悪者でいいとする。
一方でここ最近の厳しい世論について、「いまのSNSで流れている陰謀論とかは違う」という。「『増税したら出世する』『減税したら出世しない』などと言われるが、私は5年間主税局の課長を務めて、“ミスター増税”とまで言われたが全然出世しなかった」。
では、財務省はどういった説明をしていけばいいのか。ひろゆき氏は「与党の政治家を差し置いて、官僚が勝手に『これがいい』と言うのはマズい」と懸念を示しつつ、「財務省は“副作用”を説明する必要があるが、それが反対しているように見られる」と考察した。
森信氏は、ひろゆき氏に同意する。「財務省は『財源がないからできない』という言い方はしていないと思う。『政策を実現したいのであれば、全体を見直して、財源を出してやってください』と言っているはずだ。もし本当に財務省が強ければ、こんな財政赤字になってない」。
(『ABEMA Prime』より)
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