愛媛・松山市に3月オープンした弁当店では“アバター”と呼ばれる3Dの仮想キャラクターがお出迎え。実は別の場所から人が操作して、お客さんとコミュニケーションを取ることができるそう。そんなアバターを使った、時間と場所を選ばない「リモート接客」を取材した。
性別、容姿関係なしのリモート接客
松山市の繁華街の一角にオープンした弁当店「伊予乃おこわ」。炊飯器の中には炊きたての「おこわ」が入っていて、「梅じゃこ」や「山菜」など毎日3種類から選べるのが特長だが、評判なのがこの店の「看板娘」だ。
この記事の画像(16枚)お客さんに聞いてみると、「斬新というかびっくり」、「楽しくてかわいくて」、「ちょっと怪しそうな感じだったけど、話しかけてくれてちょっとうれしかった」などと答えた。
かわいくてちょっと怪しい「看板娘」とは…。
赤い三角巾にエプロン姿で出迎えてくれたのは、大型ディスプレーに人間と同じようなサイズ感で映し出された看板娘。“アバター”と呼ばれる3Dの仮想キャラクターだ。
3Dの仮想キャラクター ルアン・ロック・デーモン:
いらっしゃいませ、「伊予乃おこわ」にようこそ! 本日のおかずはとんかつとなっております。店員のルアンと申します
このアバターはオペレーター、いわゆる「中の人」が店とは別の場所からパソコンで操作していて、カメラやマイクを使い、お客さんとリアルタイムでコミュニケーションを取れるのだ。
このアバターを使ったリモート接客のシステムは、LEDなどの電気材料を扱う松山市の三五屋が開発した。
三五屋 企画・開発部 奥田善隆部長:
インターネットを使うことで距離がゼロになる。アバターを使うことで年齢、性別、容姿に関係なくできることが強み
また、アバターを人間と同じようなサイズ感で映すことで、「見る側」が親しみを感じられるそうだ。
三五屋 企画・開発部 奥田善隆部長:
「アバター=人」と考えているので、等身大にこだわっている
とても繊細な動きができ、お客さんとじゃんけんをすることも可能だ。
伊予乃おこわ・春田成裕店長:
もともと私自身がライブハウスみたいなバーをやっていて、そこでVTuberのイベントをやっていたのがきっかけ
お客さんも驚き “リアル”な接客
弁当店の看板娘を務めるルアンさん。実は、アバターを自身の姿としてインターネット上で活動する愛媛のVTuberなのだ。普段からネットを通した活動をしているため、リモートでのコミュニケーションはお手の物。店ではキャラクターを生かしたフレンドリーな接客で対応する。
VTuber・ルアンさん:
きょうは何サイズにしたの?
お客:
「小」にしました
VTuber・ルアンさん:
「小」! かわいいね
VTuber・ルアンさん:
おみそ汁がお弁当1個につき1個無料でつくんですけど、よかったらセルフサービスなのでついでください。フタがしっかりしてるからこぼれないよ。安心してね
はじめて来店したお客さん:
ちょっとびっくりしました。リアルでしゃべってくれるんですね
男性のお客さん:
遠隔なので話しやすいんですよ。普通お弁当屋さんであまりしゃべらないんで、いい機会になる
通勤時間や勤務場所に縛られない「リモート接客」に、店も新しい働き方を期待している。
伊予乃おこわ・春田成祐店長:
例えば自宅でやれるリモートワークの延長。人前に出ることが苦手な人や立ち仕事が難しい人がいると思うので、様々な働き方が増えるのではないか
リモート接客に挑戦「可能性感じた」
アバターを通した「リモート接客」を知ってもらおうと、体験会も開かれた。
参加したのは愛媛県内の女性を対象に、デジタル技術の習得を通じたキャリア形成を支援する団体のメンバーだ。
VTuber・ルアンさん:
この姿だからこそ親しみ、興味を持ってくれることが多い
弁当店で働くVTuberのルアンさんが、アバターならではの接客のコツを画面越しに伝える。
VTuber・ルアンさん:
恥ずかしがる必要はないというか、実際に見られているわけじゃないので、明るい声で言うととても良いかなと思います
三五屋 企画・開発部 奥田善隆部長:
型にはまった接客というよりは、どちらかと言うとお客さんとのコミュニケーションが重要かな
ということで、参加者が実際に、アバターを使ったリモート接客に挑戦した。
VTuber・ルアンさん:
お手々フリフリしながら「いらっしゃいませ」からいきましょう
店舗スタッフ:
「おこわ」は何にしましょうか?
参加者:
栗おすすめですよ
お客役:
栗がおすすめですか?
参加者:
うん
お客役:
じゃあお姉さんがすすめてくれたので
参加者:
えーうれしい!おいしいよ
皆さん、少し「照れ」はあるようだがアバターになりきって、楽しく接客ができているようだ。
参加者:
おみそ汁セルフになってます。熱いので気を付けてくださいね
VTuber・ルアンさん:
「熱いから気を付けてね」っていうのはキュンとした
愛媛デジタル女子プロジェクト・飯野めぐみ代表:
子育て中で外に出て働けない方がたくさんいらっしゃるので、家にいながら座りながらでもできるお仕事ということで、とても可能性を感じました
人口減少に伴い、特に地方では今後、働き手が都市部に流出することが懸念されている。
三五屋 企画・開発部 奥田善隆部長:
わざわざ都市部に働きに行かなくても、都市部でこういったシステムを使うことで働くことができると人口流出も防げる。アバターを使うことで人を活躍させたい
時間と場所を選ばないリモート接客。アバターならではの個性を発揮することで人材を生かせる、ユニークで新しい働き方につながりそうだ。
(テレビ愛媛)
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