知的障害者らを雇い入れているNPO法人「一粒舎」(千葉県木更津市)が、井戸掘り技術「上総堀り」によって水を確保し、カフェやバーベキュー(BBQ)場のオープンを目指している。通所している障害者は同NPOが運営するブルーベリー園「のらりくらり」(同市真里谷)から収入を得ているが、ブルーベリーは季節限定であることから、同NPOは経営を多角化して障害者の収入のアップにつなげたいとしている。【浅見茂晴】
障害者の収入アップへ奮闘中
同園は一般的な就労が難しい障害者らを支援する「就労継続支援B型」の作業所として2008年にオープンした。農薬や化学肥料を使わず「有機JAS認定」を取得。加工品を製造・販売するなど、「6次産業化」を進めている。
人気はブルーベリーを使ったクロワッサンサンド。近くの「道の駅木更津 うまくたの里」などでも販売されており、年1万個を超える売れ筋となっている。パフェやスムージーなども作っている。
しかし、ブルーベリーは6~8月と食べごろの時期は短い。そこで、同NPOは、障害者が1年通して働ける場を確保しようと、カフェやBBQ場の新設を思い立った。
同園の近くにある約3ヘクタールの里山を約10年かけて開墾。ここに、古民家を改装したカフェやBBQ場、さらにブルーベリー以外のフルーツ園などを計画。3年がかりで造ろうと今春、動き始めたが、間もなく壁にぶち当たった。
それが、水の確保だった。湧き水はあるものの、イノシシが荒らすなどして供給が不安定。水道を新たに敷設すれば、多額な費用が必要となる。たどりついた結論が、自分たちで井戸を掘ることだった。
地元に伝わる上総掘りでの作業には、材木や鉄管、井戸水をくみ上げるポンプやパイプ設置などが必要で、クラウドファンディング(CF)に挑戦。400万円の目標だったが、8月までの約2カ月間で約550万円が集まった。
しかし、また壁が立ちはだかった。上総掘り用の資材がなかったことだ。必要な鉄管を製作してくれる鉄工所を探し、やぐらなどに使う木材もすべて新調した。上総掘りの経験者も招いた。
高さ約7メートルのやぐらを組み上げ、ようやく完工式を迎えたのは、思い立ってから約5カ月後。掘り始めても一部の木製部品が破損し、作り直すなど次々と課題が続出。当初、1日約1メートルのペースを目標にしたが、現在は十数メートルと遅れが出ている。周辺の井戸で水が出る深さから、約300メートルの掘削を予定し、1年後の完成を想定している。
水を掘り当て、カフェやBBQ場などを新設し、目指すは障害者の収入アップだ。県内B型事業所の1カ月平均は約1万5000円だが、同NPOは月約5万円を支払っている。しかし、同NPOの飯田喜代子理事長(77)は「自立を考えると十分な額ではない」として、月10万円を目標にしている。
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