二刀流乗務社員の募集をPRする岡山電気軌道の小嶋光信社長(右)と大林玲嗣常務=岡山市中区徳吉町の同社本社で2024年12月5日午前11時52分、平本泰章撮影

 いでよ、ドライバー界の大谷翔平!――。岡山市で路面電車と路線バスを運行する岡山電気軌道(岡山市中区)が、その両方の運転をこなす新たな職種「二刀流乗務社員」を新設し、12日から一期生の募集を開始する。全国的に乗務員不足が叫ばれる中で、待遇面と仕事のやりがいを高めて人材確保につなげるのが狙い。小嶋光信社長は「(運転士は)人々の安全で安心な移動を担う素晴らしい仕事、夢の持てる楽しい仕事だと伝える皮切りにしたい」と力を込める。

 二刀流乗務社員は、まず路線バスの運転士として独り立ちしてから1年間はバスに乗務。その後、半年ほどかけて路面電車の運転に必要な免許の取得に取り組み、合格後に約2カ月の営業運行教育を受ける。路面電車の運転士として独り立ちすれば「二刀流乗務社員」として認定され、月5万円の「二刀流手当」が支給される。以後は路面電車とバスを半年ごとに乗り換える。

 採用予定は10人。応募資格は原則40歳以下で、現時点で大型2種免許などの運転資格がなくても可。来年1月12日に1次選考を兼ねた説明会(先着40人)を実施する。5日の記者会見に、2本の刀を手にはかま姿で登場した大林玲嗣常務は「『両方運転させられると受け取られる』という声もあるが、『両方を運転して岡山の公共交通を担うんだ』と考えられる人に来てほしい。二刀流は公共交通のエキスパート、スペシャルな存在になると思っている」と熱っぽく語った。

 公共交通の利用者減少や人手不足は全国的な課題。各地で路線の廃止や減便のニュースが後を絶たない中で、同社を含む両備グループは、2023年6月からタクシーや物流などを含めた全体で200人の乗務社員採用を目指すプロジェクトに取り組み、1年間で216人の雇用に成功した。

 ただ、岡山電気軌道のバス運転士の平均年齢は50歳前後と高齢化は改善できておらず、毎年5人程度の退職が見込まれ、人手が必要な状況に変わりはないという。小嶋社長は「世の中が変わり、多様な働き方が大きなポイントになっているし、我々も常に生産性を高くする努力をしていかなければならない。その一つの形がこの職種だと思っている」と、公共交通の未来を変え得るユーティリティープレーヤーの誕生を待ち臨んでいる。【平本泰章】

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