急激な気温差によって起こる「ヒートショック」。特に浴室内での発生は危険で、命を落とすことも。子どもを含む若い人も注意が必要です。ヒートショックを防ぐための冬場の入浴のポイントを専門医に聞きました。
  
福井県済生会病院・循環器内科の前野孝治医師は「ヒートショックは寒い時期に特に起こりやすい。急に寒いところに移動したり、暑いところに移動したり、急激な温度変化に伴って起きる心血管系のトラブルや血圧低下に伴うトラブルのこと」と話します。
  
暑いところから寒いところに行くと、体が寒さに対応しようとして血管が縮み、血圧は急上昇。その結果血管が硬くなり、心筋梗塞や脳出血などのリスクが高まります。
 
逆に、寒いところから暑いところに行くと、浴槽の温度に体が対応しようとして血管が広がり、血圧は急激に低下。寒さで上昇した血圧が、熱いお湯に対応しようと一気に低下するのです。そのため、たちくらみやめまいが起こり時には意識がなくなって溺死する危険もあります。
 
高齢者による「不慮の溺死」と交通事故死を比較したグラフでは、特に自宅の浴室における溺死が多く、2019年には浴槽内の溺死が交通事故死の約2倍という結果が出ています。
  
ヒートショックの影響を受けやすいのは▼65歳以上の高齢者▼過去に心筋梗塞、狭心症、脳梗塞、脳出血などの既往歴がある人▼高血圧、糖尿病などの基礎疾患がある人ですが、実は若い世代もヒートショックを甘く見てはいけません。
 
前野医師は「脳出血は若い人でも起こることがある。心臓の血管が詰まる心筋梗塞は、40歳を過ぎた男性に起きやすい。女性の場合は60歳を過ぎて起こることが多くなる」とします。
 
年齢別の心筋梗塞の発症率のグラフをみると、特に男性は40代から徐々に発症するリスクがあるということが分かります。
 
若い世代でもヒートショックを起こす可能性があるということですが、実は、子供も油断できません。
 
「子供が熱中症になりやすいのは汗をかく働きが十分備わっておらず、体温が上がりやすい。これはお風呂にも言える。子どもは若い人よりも高い温度での長風呂は特に危険」(前野医師)

前野医師に聞いた予防のポイントをまとめました。
 
<気温差>
脱衣所に小型のヒーターを置いたり、お風呂の蓋を開けたりすることで気温差を減らしましょう。
 
<浴槽からは急に立ち上がらない>

<水分補給>
41℃前後のお湯に15分浸かると、約500ミリリットルの汗をかくともいわれているため、入浴の前後にはコップ一杯の水を飲みましょう。
 
<入浴のタイミング>
食後は1時間、飲酒後2時間は入浴を避けるよう心がけましょう。飲酒をする人は、お酒を飲む前にお風呂に入るのがベストです。
  
消費者庁のデータによりますと、お風呂の時間と温度は41度で10分が目安。寒さが本格化している冬の時期、長風呂には注意が必要です。
 
10度以上の気温差は危険度が高く、寒い脱衣所やトイレに行くときは、ヒートショックの危険が迫っているということを忘れないようにしましょう。

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