約100年親しまれてきた「素人残月」=福岡県久留米市で2024年12月3日、井上和也撮影

 「素人残月(しろうとざんげつ)」。福岡県久留米市の老舗菓子店に、何ともユニークな名前の看板商品がある。どんな味わいで、「素人」の「残月」とは一体何なのか。

「創菓堂 素人残月」の店舗=福岡県久留米市で2024年12月3日、井上和也撮影

 1926(大正15)年創業の「創菓堂 素人残月」。2021年から4代目として店を継ぐ弥永妙子さん(59)は「どこにもないオリジナル和菓子」と自負する。

 外見は丸ボーロのような食感の皮で一口サイズの大きさ。皮の中には北海道産の小豆を使った黒のこしあんが入っている。「素朴な味」「懐かしい味」と評判で、市外からもファンが買いに来るという。

 店は弥永さんの祖父にあたる初代、酒井清さんが始めた。名前の「素人」は、「いつまでも初心の気持ちで」との思いを表す。また「残月」は、球体を半分に切ったようなドーム形を明け方まで空に残る月に見立て、「人の心に残る菓子であり続けたい」の意味が含まれている。

 弥永さんの父で2代目の酒井昭七郎さん亡き後は、その妻文子さん(86)が3代目として一人で伝統菓子を守ってきた。

作業場で「素人残月」を作る武田桜さん(手前)=福岡県柳川市で2024年12月9日、井上和也撮影

 22年からは文子さんと、弥永さんの夫秀治さん(66)、長女の武田桜さん(26)の3人が柳川市にある作業場での製造を支える。生地をこね、練ったあんを包み、冷凍して一晩寝かせたものをオーブンで焼くこと、1日400~500個になる。

 購入後は冷凍保存がお勧めだ。自然解凍して食べると「皮もあんもしっとりしておいしい」という。

 創業100年の節目を前に、経営者として「うちしかない商品を全国のどこかで召し上がっていただける機会を作りたい」。インターネットを通じた販売にも力を入れたい考えだ。【井上和也】

創菓堂 素人残月

「創菓堂 素人残月」の3代目、酒井文子さん(左)と娘で4代目の弥永妙子さん=福岡県久留米市で2024年12月3日、井上和也撮影

 福岡県久留米市花畑3の18の3。2002年に店舗名を「素人残月」から現名称に変更。素人残月は6個入り380円。栗残月やチョコ残月など残月シリーズは計6種類。他に季節限定の商品も。営業は午前9時~午後6時。日曜休。電話(0942・39・4522)。

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