IKEAの80cmと60cmのキャビネットの上に板を渡してシンクをはめ込んだ、簡単造作キッチン。赤いコンロは昭和のHITACHI製です(筆者撮影)ロスジェネ世代で職歴ほぼなし。29歳で交通事故にあい、晩婚した夫はスキルス性胃がん(ステージ4)で闘病中。でも、私の人生はこんなにも楽しい。なぜなら、小さく暮らすコツを知っているから。先が見えない時代でも、毎日を機嫌よく、好きなものにだけ囲まれたコンパクトライフを送る筆者の徒然日記。大好評の連載第12回です。

12畳1ルームに夫婦2人と猫と預かり犬で暮らしています。台所は幅わずか140cm、1人暮らしサイズのミニキッチンです。安くあげるために夫婦でDIYしたキッチンは、イケアのキャビネットの上に板を渡して小さなシンクをはめ込んだ簡易的なもの。2口コンロは40年ほど前の年代物で、魚焼きグリルもついていません。

さぞや使いにくかろうと思われるかもしれませんが、これがなかなか快適なのです。その理由は、不必要なものを排除しているから。今回のエッセイでは、我が家のキッチンで断捨離したもの、兼用しているもの、代用しているもの、あとほんの少しのワクワクするものをご紹介します。

12畳1ルームのキッチンで断捨離したもの

このキッチンを使い始めた時からなかったものは、三角コーナー、洗い桶と水切りカゴ、炊飯器、トースター、湯沸かしポットなど。

【画像】狭いキッチンは「モノを捨てる」ことで便利になる!その様子を見る(画像7枚)

大きな生ゴミはゴミになる野菜空袋や豆腐のパックなどにまとめています。細かい生ゴミは全部シンクに流しています。排水口に100均で買った排水口用ネットをセットしておけば、そこにひっかかるので、最後にチラシなどにまとめて包んで処分します。

ティファールの深型フライパンを水切りラック代わりに。コンロの上に乗せておけば場所も取りません(筆者撮影)

洗い桶と水切りラックは普段は使っていません。夫婦2人暮らしでもともとシンクも小さいため、洗い物がたまらないのです。食べ終わった食器は汚れがこびりつく前にさっと洗って、水切りカゴに伏せることなく、そのままクロスでさっと拭いて食器棚に戻します。

つけ置きがしたい時は深めのフライパンを洗い桶として代用して使い、そのフライパンを水切りカゴ代わりにも使っています。食器拭きが面倒なときは、フライパンにお皿を伏せておけば、翌朝には乾いています。

三角コーナーがあるほうがゴミ捨てがラクになるし、洗い桶と水切りラックがあるほうが洗い物はラクになります。ひとつひとつのアクションに対しては、便利になるとしても、三角コーナーと洗い桶があれば掃除の手間が増えるし、水切りラックがあれば調理スペースが減る。

メリットとデメリットを差し引きして、相対的に考えればいずれもないほうが使いやすいと考えました。特に我が家のような小さなキッチンでは、スペースはとても貴重なので、多少の不便があっても手放して良かったと思っています。

ミドルシニア夫婦にとっては2合炊きの簡易炊飯器で十分だった

「ちびくろちゃん」という、電子レンジ炊飯ができる商品を愛用しています。2合炊きで、1000円前後というコスパの良さもさることながら、簡易的な製品なのに少量炊きでもびっくりするほどおいしくご飯が炊けるのです。

ちびくろちゃんで炊いたご飯。2合炊きだけど2合炊くと吹きこぼれるので、実質1.5合炊き(筆者撮影)

買った直後は感動のあまりに、友人たちにちびくろちゃんをすすめまくり、けげんな顔をされていたのですが、私にそそのかされて購入した友人にも「思ってたよりはるかに本格的なご飯が炊けるね」と言わしめたのでした。

1合ずつ炊けるので、毎回炊きたてのご飯が食べられるのは嬉しい限りです。ただし留め具の堅牢度が低く、定期的に買い替えており今は3代目が活躍しています(安いので不満なし)。炊き込みご飯や、3合炊き以上のご飯が必要な時は、鍋を使って炊飯すれば問題ありません。

物心ついてから鍋でご飯を炊いたことなんて、遠足の飯ごうすいさんでしか経験がなく、「ごはんは炊飯器を使わないと炊けない」という思い込みがありましたが、実際は電子レンジでも鍋でも、手間もさほどかからず、遜色なくおいしいご飯に仕上がります。

「はじめちょろちょろなかぱっぱ……」というような、おいしく炊くこつも特段必要なく、1時間ほど米を浸水させたらちびくろちゃんでレンチン8分、鍋なら弱火で10分ほどで、ご飯は炊きあがります。

そもそも我が家の場合、年を重ねて運動量が減るのと比例して、炊飯の頻度は下がってきました。週に数回しか使用しないのに何万円もするうえにかさばる炊飯器という存在は、分不相応でトゥーマッチに感じるのです。

ただし、トースターがないのはちょっと不便です。トーストはフライパンで焼けばいいのですが、グラタンなどのオーブン料理が作れないのです。冬になると「ああ、グラタン作りたいけど作れない!」と、じれったい気持ちになります。冷凍食品のグラタンをレンチンして食べるのですが、これはこれでおいしいものの、一抹の物足りなさを感じます。

ダイヤル式の電子レンジは5年ほど前に購入。5分以降の目盛りがアバウトで使いにくく、買い替えたいと思いつつ、買い替えるタイミングがつかめない。(こういうことがあるので家電選びは慎重にすべき!)(筆者撮影)

もともとトースターと電子レンジ(オーブン機能なし)を別々に所有していたのですが、トースターが故障したため2年ほど前に粗大ゴミへ。次回はオーブンレンジを買おうと心に誓っているのですが、単機能レンジがタフなため、下手したらあと10年ぐらい現役で使えそうな気配で、買い替え時に悩み中です。

生活スタイルが変化すれば必要なものも変化する

湯沸かしポットはもともと買ったことがなく、「コンロでお湯を沸かせばいいし、魔法瓶を使えば電気代もかからない」と思っていたし、実際に不便なく暮らせていたのですが、家族の生活スタイルが変化。

スペースが極端に少ない我が家が探した、隙間にすっぽり収まるカプセル式コーヒーメーカー。カプセルが高いので、ティーバッグの紅茶を淹れるなど、ほぼコップ1杯分のすぐ沸く給湯器として使用中。超便利!(筆者撮影)

夫が病気により手指が不自由になったため、ガスコンロを使うのがリスクになったのと、脱水しやすくこまめに水分を補給する必要がでてきました。当初はウォーターサーバーの導入を考えたのですが、家が狭く設置スペースが確保できないため、「キューリグ」というカプセル式のコーヒーメーカーを買いました。

食器棚の隙間にすっぽりと収まるサイズ感なうえに、待ち時間1分ほどで、コーヒーだけでなく、紅茶や日本茶などをすぐに飲めます。カプセルなしで使用すれば白湯が出てくるため、ティーバッグを淹れたり、粉末タイプのスープを飲むなど、応用も利いて重宝しています。

9点セットで購入したティファールの鍋とフライパンも、使わないものは処分しました。鍋も2つあったのですが、ホーロー製のキャセロールをプレゼントしてもらい、そちらのほうが料理がおいしく作れるので2つとも手放し。

鍋とセットのガラス蓋や保存蓋も処分しました。9個セットで今も残っているのはフライパンだけ。ほぼ毎日活躍してくれています。いろいろな種類の鉄板がセットになったホットプレートもあるのですが、使用頻度の低い波型プレートは手放してしまいました。

「大家族で1回の食事作りに鍋を3つも4つも使う」とか「料理が趣味でいろいろな調理器具が必要」というなら、フライパンや鍋がたくさんあってしかるべきだと思うのですが、我が家は2人暮らしで、コンロは2口だけ。たくさんあっても使いこなせないし、使用する調理器具って意外と偏るので、使わないものは処分しちゃっても不便はないのです。

道具より、空間を増やすほうが料理がしやすくなる

新婚の時にイケアで買ったスプーン・フォーク・ナイフが5本ずつ揃ったカトラリーセットも、料理の時に調理器具としても使用するスプーン以外はフォークとナイフ2本を残して断捨離しました。

箸立てにすべてのカトラリーと調理器具をまとめている。(使いやすくはないのでまた工夫したいところ)(筆者撮影)

来客があったとしても小さな家です。お茶やちょっとしたお菓子は出しますが、カトラリーを必要とするような食事をすることはまずない。というか、そんなスペースがない。万が一必要になったら、使い捨てのものを用意すればいいのです。「いつかいるかも」という曖昧な未来のために使わないものを持ち続けていたことに、最近やっと気づきました。

1個あたりの占有スペースなんて大したことはないのですが、鍋2+ホットプレート1+フォーク・ナイフ各3がなくなると、狭いキッチンではかなりの空間を確保できます。セットで購入した場合はなぜか、すべて揃っていないといけないと思い込みがちですが、冷静に考えたらそれは単なる思い込みで、使っていないものって意外と多そうです。

ワクワクするアイテムは手放さない

私のインテリアのモットーは「三つ子の魂を満足させる部屋作り」。子供の頃からずっと好きなモチーフをあちこちにちりばめて、ワクワクするような空間を目指しています。人からみたら子供っぽかったり、使いやすさを度外視していたりするものでも、別にいいの。自分の家だから自分の好きなものを所有するのです。

R2-D2の土鍋は2代目。映画ホノカアボーイに登場するくまのかき氷機器は夏に活躍中。BB-8のクッキージャーにはだしパックを(筆者撮影)

大好きなスター・ウォーズの土鍋や、ガンダムの麦茶ポット、映画やドラマの小道具に登場したかわいいキッチングッズなどをコツコツ買い揃えたものたちが、狭いキッチンのポールポジションに鎮座しています。自分に課したルールは買ったからには使うこと。狭い家なので収納スペースがほぼないため、新品のまましまい込んでコレクションすることはしません。使わないともったいないしね。

必要ないものは潔く手放し、包丁は1本だけ、フライパンは2つ、鍋は1つ。便利な調理グッズも、流行りのキッチンアイテムも、インテリア雑誌に登場するようなおしゃれな鍋やポットもないけれど、好きなものに囲まれた、唯一無二の小さく愛しいキッチンで、毎日機嫌良く料理する日々です。

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