シールを10枚集めると店頭で抽選できる=横浜市のサミットストア横浜岡野店で(いずれもサミット提供)
始めたのは、高知市のマーケティング会社アッシェ。同社の吉川裕香さん(26)によると、代表の須江勇介さんが節分の時期に売れ残った恵方巻きが大量に廃棄されている問題をニュースで知り、「何かできないか」と考えたのがきっかけだった。 同市内でスーパーを展開するサニーマートと共同で、2019年2月に開始。スーパー側は、閉店時間が迫ると商品に貼る値引きシールと一緒に、「もぐもぐシール」を貼る。購入した人はオリジナルキャラクター「もぐにぃ」をデザインしたシールを10枚集める。台紙に貼って店に持参すると、店頭で「ガチャガチャ」などと呼ばれるカプセルトイを使ったくじ引きができる。 「特に子どもに人気で、ゲーム感覚で集める親子連れが多い」と吉川さん。景品は店舗によって違い、菓子や文房具、もぐにぃのシールなどがカプセルに入っている。スペースの都合でカプセルトイが置けずにスマートフォンの専用アプリで抽選をするところもあるという。 寄付も選べ、国連の機関や地域の子ども食堂などにシール1枚につき1円を店を通じて寄付できる。10枚集めるのが難しい人向けに、店に掲示したポスターに貼ってもらい、集まった枚数相当額を寄付する仕組みもある。 開始した年の10月には、食品ロス削減推進法が施行。社会の関心が高まったこともあり、参加店舗は年々増えた。21年には首都圏の4都県で店舗を展開するサミット(東京)も加わり、北海道から九州まで16社、約320店に。集まったシールは計1826万枚に上る。消費期限が迫り、もぐもぐシールが貼られた食品
吉川さんは「シールを集めて貼るという簡単な作業で、子どもからお年寄りまで誰でも気軽に参加できる」と説明。店舗によりばらつきはあるが、取り組みによっておおむね1割前後の食品ロス削減につながっているという。その実績が評価され、昨年には民間団体が選ぶ「グッドデザイン賞」、「SDGsアワード2023」のSDGs推進ベスト企業賞に相次いで選ばれた。 他の企業が同様の取り組みを行うほか、期限が迫った商品に貼られた値引きシールを集めて応募すると、賞品が当たる自治体のキャンペーンもある。 農林水産省の推計では、国内でまだ食べられるのに捨てられた食品ロスは21年度で523万トン。国民全員が毎日茶わん1杯分の食べ物を捨てている計算になる。 アッシェはスーパーと共同して、店舗や近くの保育施設などで「もぐにぃ」が登場するイベントも開催。もぐもぐチャレンジや食品ロス問題の啓発に力を入れている。 「今後も導入するスーパーを増やし、全ての都道府県に広げることが目標。イベントも増やしていきたい」と吉川さん。「食品ロスは、誰もが関連する身近な問題。もぐもぐチャレンジに参加したことで興味を持ってもらい、楽しみながら解決に取り組んでほしい」と訴える。
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