入院や施設入所のときに手伝ってくれる人や緊急連絡先になってくれる人がいない。行政手続きなどの書類作成が難しい――。頼れる身寄りがいない高齢者の困りごとに、日々住民と接する自治体はどう対応しているのか。国の補助を受けて日本総研が実施した調査では、公的な制度や権限の整備が遅れているなかで、自治体が苦慮している現状が浮き彫りになった。
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調査には、913自治体(福祉事務所などの回答も含む)が答えた。
支援を必要とするさまざまな場面を例示して何らかの対応をしているか尋ねたところ、「銀行に同行し振り込みを支援」は20.3%(連携先との協働も含む)、「救急車に同乗」は18.3%、「入院手続きを代行」は20.1%、「転居時のごみの処分」は28.4%が対応していると答えた。こうした例は自治体職員の本来業務ではないものの、それを超えて対応するケースが多々あるとみられる。
かつては家族がこなしていたものも多い、多様な困りごと。そのなかで、自治体が特に対応が難しいと考えているものも尋ねた。「入院中に必要な着替えなどを届ける」「転居時のごみの処分」などは「時間や人手がかかるため対応が難しい」とする自治体が多かった。「銀行に同行し振り込みを支援」「入院の手続き代行」「本人の医療同意に付き添う」などでは「権限が誰にあるか不明確なため対応が難しい」とする回答が目立った。
一部の自治体は、独自事業やサービスをつくり、身近に頼れる親族がいない人に支援を提供していたが、その数はごく少ない。手続きや外出支援などの「生活支援」を実施しているのは5.0%、付き添いや準備、緊急連絡先となるなど「入退院時の支援」は4.0%、入所・入居先探しや引っ越しの手伝いなど「入所・入居支援」は4.1%、火葬や納骨、遺品整理など「死後対応」では4.8%だった。社会福祉協議会(回答は649)でみると、支援を実施しているのは「生活支援」28.0%、「入退院時の支援」18.0%、「入所・入居支援」17.6%、「死後対応」10.5%だった。
調査報告書では、各種の公的なデータなどをもとに、役所や病院に提出するような書類を自力で作ることが難しい人は、在宅で暮らしている人だけでも550万人にのぼると推計している。
調査を担当した日本総研の沢村香苗研究員は「人手や時間面での負担のほか、権限が不明確ななかで業務範囲を超える支援を提供しなければならないことについて懸念が示され、自治体の危機感が伝わってきた」と話す。
そのうえで、「身寄りのない高齢者を支える公的な仕組みに加え、金銭の管理や死後の対応をどこまでどのように行うのか国が考え方を示し、自治体の実情に合わせた支援ができるようにしていく必要がある」と指摘する。(土肥修一、山田史比古)
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