特集は鮮魚卸の新たな取り組みです。静岡で魚を仕入れている長野県下諏訪町の業者がこのほどランチ営業も始めました。挑戦を後押ししたのは、信州と静岡を結ぶ「道路」でした。
■ランチで味わう新鮮な魚
さまざまな刺身が味わえる定食に、本マグロの丼ぶり。
桜エビのかき揚げも。
客:
「うまいっすね、素晴らしいです」
ここは下諏訪町の鮮魚卸・丸松水産。
4月22日から「丸松市場食堂」と銘打ちランチ営業をしています。
■おいしい魚を信州でも
社長の松浦志保さん(45)が、魚のうまさをもっと広めたいと始めました。
丸松水産・松浦志保社長:
「魚によって寝かせた方がよりおいしくなるものもあるので、それぞれの魚の食べごろ、一番おいしくいただけるタイミングでなるべく出せたらな」
■魚を仕入れるのは静岡
卸業者のランチ営業。
挑戦の背景にあるのは社長の思いだけではありません。
松浦さんは静岡の出身で地元の市場で仲卸をしてきましたが、信州は鮮魚の需要が高いとみて、2015年、丸松水産を開業しました。
現在も魚を仕入れているのは、静岡の卸売市場。
毎朝、新鮮な魚を仕入れて県内の飲食店や旅館に届け、さらには小売りもしてきました。
コロナ禍に入ると卸先が相次いで休業し、売り上げは減少しましたが、2023年から挽回しています。
■変化の鍵は中部横断道
大きく影響したのが、信州と静岡を結ぶ中部横断自動車道の延伸です。
2021年に双葉ジャンクションと新清水ジャンクションを結ぶ、山梨・静岡間は約74キロが開通。
中央道も利用すると諏訪・静岡間の所要時間は約2時間です。
松浦志保社長:
「始めた頃なんかは、ほとんど国道52号線で、3時間半くらいはかかってたので1時間以上の短縮にはなってるかな」
■時短効果は大きく
この短縮効果は大きく、これまで中南信がメインだった取引先を2023年、東信地方にも広げました。
東御市のスーパーでマグロの解体ショー。
松浦志保社長:(2023年7月):
「こちらが背側ですね。こちらから取れるのは赤身と中トロ」
今では東信地域の卸先はスーパーなど約10カ所に増えました。
松浦志保社長:
「最初は僕も静岡の人間なので下諏訪の方には知人とか身内がいないところ、飛び込み営業で始めさせていただいたところから今、多くのお客さまの支持でここまでやってこられて、ありがたいなという部分と、これから先、どういうふうにしたら力になれるか考えながらやっていきたい」
先週の金曜。
この日、静岡で仕入れてきたのは朝取れの生シラスなど。
松浦志保社長:
「生シラス、基本足が早いからその日のうちに食べてもらうのが一番おいしい」
■ランチに進出
中部横断道の時短効果も生かした次の一手。
それが「ランチ営業」でした。
松浦志保社長:
「よく聞かれたりすることがあって『どこに行ったら、うちの刺身食べられる?」。より多くの方に知っていただくためには、飲食がすごい重要かなと思いました。こっちに着くのが10時とかになると、仕込みとか準備が間に合わない。(到着が)早くなったのはものすごく大きい」
■「海を身近に」
4月初めに飲食の営業許可を取得し店内にはマダイやカンパチなど約30匹の魚が泳ぐ大型水槽も設置。
「市場食堂」の雰囲気を再現しました。
松浦志保社長:
「海を身近で感じられる空間で食事も楽しんでいただける形ができれば」
営業は午前11時から午後2時までです。(水曜定休)
ランチの一番人気は丸松刺身定食。
約10種類の海の幸が味わえます。
松浦志保社長:
「きょうは、ほとんどキンメダイの頭なんですけど」
魚の頭や骨を使ったあら汁は無料で食べ放題です。
刺身定食を頼んだ人(町内から):
「おいしいですね。あら汁もいいですね。家ではなかなか無理なので」
「いいね、いろんな味が楽しめて、こんなにあると思わなかった」
■旬の桜エビも
伊勢で水揚げされた本マグロは丼で。
旬を迎えた静岡の桜エビはかき揚げにして提供。
桜エビのかき揚げを食べた客:
「おいしい、サクサク」
丸松水産・松浦志保社長:
「朝取れの魚であったり、その日取れたものやマグロなんかは生の本マグロを一本で買って、おいしいタイミングでおいしいものを食べていただく、そこはこだわってる。一口食べて感動していただけるような鮮魚を出したい」
新鮮な海の幸を信州に。
卸業者の挑戦を道路事情の変化が後押ししています。
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