沖縄県豊見城(とみぐすく)市沖でこのほど行われたサンゴの植えつけ作業。
実はこのサンゴは海ではない「変わった場所」で育てられた。
沖縄のサンゴを保全するユニークな取り組みを取材した。
IT技術を活用したサンゴの育成
熱帯魚が泳ぎ回る水槽の中で成長するサンゴ。
たくさんの水槽が並んでいるのは企業のオフィスだ。
那覇市泉崎にある企業「サンクスラボ」では、IT技術を活用したサンゴの育成に取り組んでいる。
サンクスラボ 珊瑚プロジェクトグループ 平良圭太 グループ長:
現在サンクスラボの水槽は約60台、2000株のサンゴを育てております
照明や温度、水位など詳細なデータを管理し、水の入れ替えや水槽内の掃除などメンテナンスを行っているのは、障がいがあり就労支援を受ける人たちだ。
サンクスラボはサンゴのオーナー企業を募り、障がいがある人たちと雇用契約を結ぶ取り組みをしている。
障がい者の雇用機会を創出し、企業側にとっては法律で定められた障がい者の雇用率を充足できる仕組みである。
都会で育ったサンゴを海に植えつけ
2024年4月17日、オフィスで育てたサンゴの植えつけ作業が行われた。
植えつけるのは豊見城市の沖合、育てたサンゴの苗を採取した海だ。
この「里海珊瑚プロジェクト」は、自治体や漁協の協力が必要不可欠だ。
この日は豊見城市や漁協の関係者など十数人が参加した。
到着したのは漁港からおよそ2キロの海域。
沖縄テレビ 髙良琉海子記者:
都会で育ったサンゴたち、これから与根の海に植えつけられます
この海域では2023年10月以降、サンゴの植えつけは今回で3回目。
この日は天候にも恵まれ、参加者も目の前に広がる美しい光景に思わず声を上げた。
作業には地元である豊見城市の徳元次人市長も参加した。
作業は20分ほどで無事に終了した。
徳元次人 豊見城市長:
(作業は)うまくいきました。だいぶサポートもいただいたので、スッときれいに、ねじも入りました。あれが数年後どのような形になるか、成長してサンゴ礁として群がることをすごく期待したいところです
植えたサンゴも順調に成長していたということで、安堵した様子だった。
サンクスラボ 村上タクオ社長:
(植え付けから)半年ちょっとなので、イメージとして親指大が130%くらい大きくなった感じで、すくすくと育っておりました。また元気に、彩りもすごく新鮮な色で再会できたので、とても安心しました
那覇空港近くに広がる天然のサンゴ
植えつけた海域から3分ほど船を走らせた先に、メンバーがプロジェクトの目標にしている場所がある。
那覇空港を発着する飛行機を仰ぎ見るその場所には、天然のサンゴ礁が広がっている。
美しいサンゴ礁、そこに暮らす海の生き物たち、海の生態系の素晴らしさを感じさせてくれる。
サンクスラボの村上タクオ社長は、「まだまだ綺麗な天然のサンゴ礁もこの海にはたくさんあるが、しっかりと天然のサンゴを守っていくと同時に、我々が人工的なアシストも含めて、海の中でもサンゴの森をしっかりと茂らせていきたい」と語る。
自然を守ることは、漁業者の生活にも良い影響を与えると関係者は話す。
糸満漁協 与根支部 大城大樹 支部長:
(サンゴが)よく産卵する場所が、イカの産卵場所と言われており、自分たちも漁業をするうえで、クブシミ(コブシメ=コウイカ)などの産卵場所を増やしていかないと漁業も成り立たないです
また大城支部長は、自身も素潜りを行うため、濁っている海よりは、サンゴがいっぱいできれいな海のほうが泳いでいても気持ちいいので、今後が楽しみと期待を込めた。
植えつけしたサンゴは、漁業関係者やサンクスラボのスタッフが定期的に成長を確認していく。
オフィスで育てたサンゴをふるさとの海へ。沖縄の美しい海の環境を守る新たな取り組みが始まっている。
(沖縄テレビ)
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