静岡県の川勝平太 知事は5月9日に退任会見を開き、リニア中央新幹線をめぐる問題について「強引に進むのか、あるいは留まるのか、まさに岐路に立った。それをどうするのかについてはモニタリング会議の見識次第」と持論を述べました。

川勝知事は4月1日に県庁で行われた入庁式で、新規採用職員を前に職業差別とも受け取れる発言をした責任を取って4月10日に退職願を提出し、5月10日午前0時をもって自動失職します。

一方で、川勝知事は辞職の最大の理由についてリニア中央新幹線をめぐる問題に一定の区切りがついたことを挙げています。

こうした中、5月9日に退任会見を開いた川勝知事は、この場でもリニア問題について持論を展開しました。

川勝知事はまず、南アルプスが1964年に国立公園に認定されたことやユネスコのエコパークに認定されていることを例に「自然環境の保全は日本政府の国策でなければならないし、生態系を保全することは日本政府の国際的責務」と言及。

その上で、国の有識者会議が2023年末にまとめた報告書について触れ、「南アルプス山中のトンネルの上を流れる沢は工事によって例外なく水位が下がると報告されている。水位が下がると水際に生きる生物は生死に関わる厳しいマイナスの悪影響を受ける。また、工事で出る濁水を透明にするために凝固剤の使用を報告書は提案している。凝固剤を使うと水質は確実に悪化する。この報告書の内容を一読し、一言で言えばトンネル工事によって南アルプスの自然環境はマイナスの悪影響を受ける。言い換えると工事によって南アルプスの信号には黄信号が点くという認識を私は持った」と述べました。

さらに、JR東海が国のモニタリング会議で静岡工区について工期の見通しを公表したことや山梨県や長野県の工事に関しても2027年以降の完成となることを発表したことを受け、「JR東海の前社長の体制では一貫して静岡県の工事の遅れが繰り返し強調されていた。しかし、静岡県のみならず工事が遅れていることが発覚した。これらは不都合な事実。臭いものに蓋をするという感のある従来のJR東海の姿勢が一新したと思う。正直に勝る徳はない」と論じ、「強引に進むのか、あるいは留まるのか、まさに岐路に立った。それをどうするのかについてはモニタリング会議の見識次第。以上のことをもって4期目の公約(南アルプスの自然環境の保全や水資源の確保とリニア工事を両立)に関わる仕事に1つの区切りがついたと判断した」と結んでいます。

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