2025年4月に鹿児島県内で初めて設置される『夜間中学』についてお伝えします。
そもそも夜間中学とは何なのか説明しますと、様々な理由により義務教育を修了できなかった人や、不登校などで学校に通えなかった人、自分の国で義務教育を修了していない外国籍の人などが学べる場で、授業料は無償です。
国は各都道府県と政令指定都市に少なくとも1つ、この夜間中学の設置を求めています。
どんな人たちが何のために通っているのかー
夜間中学の役割について考えます。
2024年2月。
鹿児島市で行われたのは2025年開校する夜間中学に関する相談会です。
父親
「娘が『中学校の勉強をやり直したい』という意思が強かったので来た」
10代
「設備や教えてくれる先生がいるのはいいこと。わくわくした」
20代
「中学校を卒業したことも、行ったこともないので、ぜひ行ってはみたい」
個別で行われた面談には、夜間中学に興味をもつ幅広い年代の人が訪れていました。
4月時点で、全国にある夜間中学は53校。
九州では2024年に入り、開校ラッシュが続いていて、4月に福岡、佐賀、熊本、宮崎、沖縄で新たに6校が開校しました。
そのうちの一つ、熊本市の県立ゆうあい中学校です。
定時制高校の敷地内に建設された校舎には、1年生から3年生までの3つの教室があります。
始業前の職員室をのぞくと、教員が授業の準備中。
年代も国籍も異なる生徒たちに分かりやすく教えるため、教材を自作する教員が多いといいます。
理科担当・宮本淳一教諭
「理科、私の場合はプレゼンテーションを中心に」
Q手作りですか?
「もちろん。基本的には視覚的に。情報量が多すぎると負担が大きい。それを極力減らしているし、どんな文章でもふりがなは必ずふっている」
数学担当・中村愛教諭
「計算練習とかは、+5と-6を合わせたら-1みたいな感じで、一方的に伝えるというよりも横のつながりができればいいなと思いながら」
午後5時35分に各教室で授業が始まります。
習う教科は、通常の中学校と同じ。国語や数学といった座学だけでなく、高校の教室を借りて音楽や美術といった授業も行われます。
学習の理解度や本人の希望に応じて、1年生から学び始める生徒もいれば、3年生から入学する生徒も。
10代から80代までの34人が通っています。
3年生(17歳)
「中学校が卒業できなかった。色々あって。どうしても高校に行きたくてこの夜間中学に来た。めちゃくちゃ楽しいです。この中で1番うるさいです」
3年生(21歳・フィリピン出身)
「日本語を覚えるため(に通っている)。みんなと勉強することは楽しい」
入学の理由はさまざま。
でも全員に共通しているのは、“学びたい”という思いです。
1年生(68歳)
「転校が多かった。学校がかわる度に勉強についていけなくて、ずっと心に残っていた学びをやってみたいと思って来た」
ここに通うため、八代市から引っ越してきたそう。
1年生(68歳)
「分からないことを教えて下さる人が側にいるから勉強できる。個人ではできないと思う。3年卒業するのが目標」
夫婦で通う生徒もいました。
1年生(60代・夫婦)
「送り迎えを毎日するなら、じゃあ一緒に来ようかと。入ったら楽しい!私たちだけの世界じゃなく、色んな輪が広がった」
60代にして新たな世界に出会えたと、笑顔で話してくれました。
午後6時20分、1時間目の終わりに教室を出て行く生徒たちが向かったのは…
食堂です。
この学校では、希望者に給食が用意されます。
「おいしい。もう夜ご飯食べなくていい」
その後、授業は午後9時過ぎまで行われます。
熊本県立ゆうあい中学校・小原ひとみ校長
「夜間中学の世界でよく言われているのが、本当はあってはならない学校。でも現状なくてはならない学校。学び直しの場として、公的にたてるということは大きな役割だと思っている」
そんな役割を果たすべく、ゆうあい中学校にはある特色があります。
1つ目は「オンライン」。
南北に広い熊本の地形から遠方に住む人たちも学べるようにと、全国の夜間中学で初めてオンライン生も受け付けています。
もう一つは地元大学生の登用です。
ボランティアで参加していて、生徒の学習支援と教員のなり手不足を同時にカバーしています。
ゆうあい中学校ならではの特色が、生徒の学習意欲と明るい雰囲気づくりに繋がっているようです。
熊本県立ゆうあい中学校・小原ひとみ校長
「目標も実現させつつ、社会が求める力というものもあると思う。その両輪を色んな教育活動を通して、達成させていきたいと思っている。今みんなで知恵を出しながらやっている」
一方、鹿児島では、2025年の開校に向けて準備真っただ中。
野平美奈子記者
「夜間中学ができるのは、ここ、鹿児島市の開陽高校の敷地内です。現在ある教室に加えて、これから増築工事も行われるということです」
校舎横の空きスペースに、校長室や職員室を増築予定で、これから本格的に工事が進められます。
県教育委員会には夜間中学開校準備班も設置され、7月からは県内各地で入学説明会が始まります。
学校名は、「いろは中学校」に決まりました。
県教育委員会 夜間中学開校準備班・加藤淳一参事
「物事の始まり、基礎、『いろは』から学べるということで『いろは中学』。1人1人のニーズや思いを大切にしながら、学ぶことの大切さ、楽しさを感じられるような学校にしていきたいと思っている」
『学びたい』という思いに応えるために、どのような環境を整える必要があるのか鹿児島の夜間中学の在り方が注目されます。
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