ふんわり、しっとり、中にはクリームなどの具材がどっさり。そんな「生ドーナツ」が人気だ。若い女性を中心に長蛇の列ができる有名店も多く、SNS(ネット交流サービス)で話題になっている。各地で専門店の開店が相次ぎ、ワッフルやタピオカのようなブームを呼びつつある。
生ドーナツの火付け役は、福岡市発祥の人気パン店が東京・中目黒に2022年に出店した「I’m donut?」(アイムドーナツ?)とされている。都内や福岡市で店舗を増やし、行列は数時間待ちになることも。SNSで「朝から並んだ」などと話題になっている。
波に乗ろうとカフェやパン店でも生ドーナツの新商品が続々と誕生し、コンビニも商品化。新業態として専門店を展開する企業もある。
北海道の牧場が母体の「MILK DO dore iku?」(ミルクドドレイク)は23年以降、北海道産牛乳という素材を売りに、青森県以北で7店舗を展開。今月11日には8店舗目が福岡市にオープンした。調理場を備えたトレーラー型の店舗で、担当者は「関東や中部地方にも展開したい」と意気込む。
生ドーナツとは何なのか。神戸製菓専門学校製パン本科の南田正博・学科長によると、各店の商品は「従来からある菓子パンの製法を応用したもの」と解説する。
卵とバターを多く配合した生地を熟成し、高温短時間で揚げると、ふんわりもちもちの食感に仕上がる。「発酵機能のあるオーブンがあれば比較的簡単に家庭で生地を作り、調理できます」と南田さん。穴のない円形のドーナツにクリームなどの食材を詰め、独自性を打ち出した商品が多いという。「生チョコや生キャラメルのように、『生』とつく軟らかい食感はブームになりやすい。SNSでのイメージ戦略がうまい」と南田さんは分析する。
生ドーナツは300円前後の商品が多く、一般的なドーナツより高級感があるものの、ケーキよりは安い。自分へのご褒美として気軽に買え、手土産としても人気だ。ドーナツは海外店の出店などで過去に何度もブームが起きた。
ただ、ワッフルやタピオカのように流行はいつか収束する。生ドーナツ店の関係者は「末永く愛されたいが、ブーム終了も見据えて初期投資を短期間で回収できるように、出店方法や運営を工夫している」と話している。【久野洋】
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