富士山の山梨県側で宿泊者を最も受け入れている山梨県富士河口湖町が、宿泊税を2026年にも導入する方針を固めた。税収は観光振興のほか、深刻化するオーバーツーリズム(観光公害)対策に充てるという。隣接する富士吉田市も同町と足並みをそろえ、同時期に導入する方針だ。

 町や町観光連盟によると、町内の宿泊施設は約700軒あり、年間宿泊者数は少なくとも200万人を超える。富士五湖のうち河口湖、本栖湖、西湖、精進湖が町内にあり、近年は外国人観光客(インバウンド)が急増。宿泊施設や飲食店が活況をみせる一方で、老朽化した施設も多いためバリアフリー化などの課題を抱えている。

 観光地でのごみのポイ捨てなどマナー低下も問題化している。富士急行線河口湖駅近くでは1年半ほど前から、コンビニの上に富士山が乗ったような写真を撮ろうとする外国人が殺到。車や歩行者の通行の妨げにもなっているとし、町は富士山の眺望を遮る黒い幕を設置する作業を進めている。

 清水勝也・政策企画課長は「町の主産業は観光。しかし、少子高齢化の進行によって今後は税収減が予想される。観光分野に特化した法定外目的税を宿泊者に負担してもらい、おもてなしや観光公害対策に充てたい」と話す。

 町は宿泊税を26年の早い時期に導入したい考え。今後、宿泊税の金額や具体的な施策を検討し、25年度に議会での審議を経て条例を制定し、総務省と協議を進めたいという。町の観光関連予算は5億4千万円。仮に宿泊者200万人に宿泊税が100円ずつ課税されると2億円の増額につながる。宿泊税の導入は、昨年11月に初当選した渡辺英之町長が公約に掲げていた。

隣接する富士吉田市も

 同町と隣接し、富士急行線や中央道でつながる富士吉田市も4月から庁内で調査や研究を始め、2026年度の導入をめざすという。

 市によると、3月に富士吉田商工会議所から提案を受け、堀内茂市長が検討を指示した。市内の宿泊施設は約190軒。市幹部は「富士河口湖町と金額の格差が出ないよう、連携して導入を進めたい」と話している。

 総務省によると、宿泊税は東京都や京都市、福岡市など9自治体で導入している。徴収金額は宿泊料金などによって50~1千円と幅があるが、100~200円が一般的という。山梨県内で宿泊税を導入している自治体はない。(池田拓哉)

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