特集はマイナ保険証です。マイナンバーカードに保険証の機能を持たせたものですが、4月の全国の利用率は6.56パーセント。従来の保険証は12月に廃止される予定で、政府は医療機関に一時金を支給するなどして、利用促進を図っています。                               しかし、医療現場では異論が根強くあります。普及は進むのでしょうか。


マイナ保険証の利用 まだ少数派

御代田町の林歯科診療所。検診に訪れた男性が窓口で取り出したのは「マイナ保険証」です。この日、初めて使ったと言います。


スタッフ:
「これ持って、このまま中に入れて。スポっと入れちゃって」
「便利だった?」

マイナ保険証を始めて利用した70代男性:
「便利、便利」
「(記者・難しさは?)いえ、全然抵抗ないです。(前より便利?)そう思います」


でも、男性のような「マイナ保険証」を使う患者は少数派。病院によりますと約70人いる患者のうち、使っているのは10人程度です。

70代女性:
「面倒くさいから、そのまんまの保険証。(マイナンバーカードは)ちゃんとしまってあります、大事に」

80代男性:
「今のところ不便じゃねえもんな。(従来の『紙の保険証』が)廃止されたら困る、不便だな」


利用率低迷の背景に「トラブル」

マイナンバーカードに保険証機能を持たせた「マイナ保険証」。

保険の資格情報の他に薬の処方履歴も読み取ることができ、効率化や医療の質の向上につながるとされています。

2023年4月から医療機関での対応が義務化されましたが、24年4月の利用率は全国で6.56%。長野県内は3月の時点で4.59%です。

マイナカード自体の保有率(4月末)73.7%に比べると、低迷しています。


背景として考えられるのが2023年に相次いだトラブルです。

林歯科診療所・林春二院長:
「使い勝手が悪いってことと、国がやってることが心配だっていう部分がある。国が強引にやっちゃって、ついていけない部分があるんじゃないですか」


県保険医協会が行ったアンケートでは、回答した106施設のうち「保険者情報が正しく反映されていない」(43件)など、67%でトラブルが起きていました。

「他人の情報がひも付けられていた」ケースも2件ありました。

こちらの患者も…。

70代男性:
「(保険証は紙とマイナ、どちらを?)紙のものです。使うメリットに対してリスクのほうが大きい。他人のマイナンバーと取り違えたりとかがあると、もう少ししっかりしたシステムとが確立しないと、マイナスが気になる」


利用促進で医療機関に一時金  

一方、従来の「紙の保険証」は今年12月に廃止が予定されています。

そこで政府は低迷する利用率を上げようと5月から7月までの3カ月を「利用促進集中取組月間」にしていて、医療機関等にマイナ保険証の利用者増加に応じて最大10万円(病院は20万円)の一時金を支給します。

県保険医協会副会長「方針見直しを」

これに県保険医協会の副会長でもある林院長は異論を唱えています。

林春二院長:
「われわれがお金もらいたくて言ってるようになっちゃうじゃないですか。だから国の方がもっとちゃんとした説明をしてくれないと…」

今のところ、自身の医院でマイナ保険証による大きなトラブルは起きていませんが、懸念が解消されないままでは患者に勧めることはできないと話します。

林春二院長:
「(メリットなどを)周知できていないのはむしろ行政側の不親切から起こっている。俺たちが決めたことには黙ってついてこいって言われたって、それは無理」

国の方針とは裏腹に普及が進まないマイナ保険証。林院長は紙の保険証を廃止する方針を見直すべきだと訴えます。

林春二院長:
「医療保険入って、ちゃんとお金も払っていながら、(廃止で)利用ができないということになるとやっぱり問題になりますし、そんなことをするより、今までのものも同時に(利用)できると。使い勝手が良い方を利用してくださいと。ステップを踏んで懇切丁寧に、国民がついていけるようにしていってもらいたい」

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