秋田県が定める5月26日の「県民防災の日」を前に、県の消防防災ヘリコプターの活動に密着した。上空から県民の命と安全を守っている。
県の消防防災ヘリコプター「なまはげ」は1999年に就航。人々に幸福を与え、力強く勇ましい「男鹿のナマハゲ」をイメージして名付けられた。
「なまはげ」は消防からの要請を受けて出動する。時速200キロで飛行するため、県内であれば30分ほどで現場に到着できる。
山菜・きのこ採りシーズンの出動が特に多く、就航以来トータルの出動回数は2100回を超えた。
大規模な災害が起きた際は、県をまたいで出動。4月に岩手県宮古市で起きた山林火災でも活動した。
佐藤愛純アナウンサー：
「午前9時、県防災ヘリ・なまはげの1日が始まる。まもなく訓練が行われる」
主な任務は上空からの消火活動や遭難者の救助。いつ、どこから来るか分からない出動要請に備えて、常に準備を整えている。
この日の訓練に、佐藤愛純アナウンサーが「救助される側」として参加した。
要救助者などをつり上げるワイヤーは直径約5ミリだが、270キロまで持ち上げることができる。
佐藤愛純アナウンサー：
「安定していたし、隊員がジェスチャーや表情でコミュニケーションをとってくれて、それも心強い。精神的にも体感的にも安心しながら戻ってくることができた」
県総合防災課消防保安室・長谷川雄美さん：
「派遣されている消防隊員は8人いるが、各地の消防本部から非常に優秀な隊員がそろっているので、本当に心強く感じている」
救助隊員は、県内9つの消防本部から出向している消防職員。陸と空の活動内容は異なるため、出向を前に約3週間、実践的な訓練などを通じて航空隊としての技術を高めている。
活動では各消防本部での経験や土地勘などが生かされる。
ヘリの中は音が大きく会話が難しいため、身振りや合図で意思疎通を図っている。日頃のコミュニケーションや訓練は協調性や仲間意識を生み出すため、安全な飛行・救助に欠かせない。
2024年4月に配属された佐藤元さん。消防の仕事は16年目だが、航空隊としては新人だ。
能代山本広域市町村圏組合消防本部から派遣・佐藤元さん：
「所属の本部で活動しているときに航空隊を要請して、その活動を見て大きな憧れを持った。まだまだ現場経験がとても少ないが、地上隊で活動が困難な場合に防災航空隊は出動する。その中で大きな任務を得ていると思っているので、やりがいを感じている」
一方、鹿角広域行政組合消防本部から派遣されている野呂洋平さんは航空隊3年目。「普段あたふたしてしまうタイプなので、救助を求めている人にそういう不安を抱かせないように、常に平常心を心がけている」と話す。
パイロットの工藤敦穂さんは、県警航空隊のパイロットも努めている。工藤さんは1996年に県警の初めてのパイロットに任命されたベテランだ。
任命当時、秋田テレビの取材に対して工藤さんは「警察活動はさまざまあるが、その中でも遭難・救助活動を主体とした空の勤務に非常に魅力を感じて、自分もその一員として力になりたいと考えて希望した」と語っていた。
パイロット・工藤敦穂さん：
「あの時は免許を取ったばかりで操縦するのが精一杯だったが、いま振り返ってみると、初心って良いなと思う。秋田は山岳地帯が多くて、独特の山岳遭難が全国でも多いほうなので、山岳遭難防止の啓発活動を行いつつも、助けを求める人がいたら救助に向かうということで、ちょっとした重圧はあるが、ミッションをやり遂げた時の充実は何にも代えがたいものがある」
県総合防災課消防保安室・長谷川雄美さん：
「隊員は日々訓練を重ねて、高い使命感を持って危険で困難な活動に務めている。県民の財産・生命をわれわれの部隊も守っているので、そういった意味では大きな意義があると考えている」
上空から県民の命と生活を守る「なまはげ」。その陰には、努力と強い思いがある。
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