地元の抹茶を使った鮮やかな緑色のあんを、香り高いシナモンをまぶした茶色の皮で包んでいる。お茶の実をかたどったまんじゅうは、その名も「茶の実」。2023年に発祥600年を迎えた八女茶のお膝元らしい和菓子だ。
明治35(1902)年創業の福岡県八女市にある菓子処「きくや」の名物。約80年前、2代目店主の川島亀雄さん(故人)が「八女のお茶とお茶の実のことを知ってもらい、お土産になるものを」と考えついたという。
茶の木には、秋に実がつき、緑色から茶色へ変化する。菓子の「茶の実」には八女・星野の抹茶を使い、前の日に仕込んだあんを練る。「安全なもので差別化を」と意識し、濃い味わいにするために、当初に比べて抹茶の量を増やした。シナモンも5、6年前に有機栽培のものに変え、「やさしい香り」になったという。
多い時で6、7人いた和菓子職人は、現在、亀雄さんの孫で4代目の健男さん(59)が一人でやっている。それでも、生ハムとメロンを挟んだどら焼きといった創作菓子を手掛けるなど、店には常に約40種類の商品を並べている。
一番人気はやはり「茶の実」で、年間2万~3万個を作る。常連客のほか、市外からも訪れ、帰省した際に「懐かしい」と買い求める人も。最近は外国人の姿も増えているという。
健男さんは「茶の実は抹茶とシナモンがうまい具合に混ざり合った味わい深いものなので、食べてほしい。これからも作れるだけ作っていきたい」。【井上和也】
菓子処「きくや」
福岡県八女市本町69。1902年に「菊香堂」として創業。その後、有限会社「菊屋」となり、店には屋号の「きくや」の看板を掲げている。「茶の実」は1個180円(税込み)。午前9時~午後6時。不定休。きくや(0943・22・4643)。
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